人を傷つけない優しい魔法に触れて、大悪党魔法使いはどう変わるのか。

私利私欲のために魔法を使う大悪党魔法使いバーナードに、師匠である西の大魔法使いアナベルから制裁が下った。バーナードは犬にされてしまったのだ、わふんっ。元に戻るには魔法で良い行いをしてマナを貯めるしかない。かくしてワンコの更生旅は本人が納得しないままスタートしたわけだが、この旅でバーナードは世界一優しい魔法使いになることを夢見る少年オリヴァーと出会う。魔力量が桁違いのオリヴァーに隠された秘密とは。なぜ彼はそこまで優しい魔法にこだわるのか。大悪党バーナード犬と心優しいつよつよ弟子の凸凹コンビは、山の麓の町コーランドで死者蘇生を望むとある少女と出会う――。


心温まり、時に締め付けられ。一貫して「優しさ」について考えさせられるストーリーです。「小さな親切大きなお世話」という言葉がありますが、優しさが空回りする場合もあるし、一方への優しさがもう一方を傷つける場合もある。それでも優しい魔法使いでありたいと願うオリヴァーとの旅で、バーナードのまだ見ぬ一面がもっと見れる日が訪れたら良いなと思いました。

それと本編と関係ない部分なのですが、作者様の「読ませる力」をひしひしと感じました。構成なのか、言葉選びなのか、センスという一言で語るにはあまりあるほどの強烈な吸引力があるのです。魅力的なキャラクターと奥行きのある世界観、そして読みやすさが加われば、次へ次へとどんどんページを捲ること間違いなし。読み手にも書き手にもぜひ読んでいただきたい一作。どうかご一読あれ!