地獄。その名は春

春をテーマにして書かれた作品です。
しかし地獄絵図です。季節的な春ではなく、身を売って命を繋ぐしかない、生き様としての春だから。梅も桃も登場しますが、何一つ幸せにしてくれない、目を背けたいものばかり。

美春と名付けられ、あたたかく育つことを願われながらも、現在の自分がそのようになっていない。朝、目を覚ますたび、そういう人生が続く悪夢。ならば春という名前は呪いの刻印でしかない。

死でしか終わらせることができない春。

誰かがうららかな春を楽しんでいる時、苦悩で楽しめない人がいる。
誰もが目を背けている春の影を、まるで呪うように全力で書いています。

願わくば美春の未来に、あたたかな春がやってきますように。


※追記
お題が「春」だとどうしても「冬からの脱出」「春の散り際」を描く作品がどうしても多くなる中、春ってなんだろうと一から考え直し、すでにできあがってる「春」のイメージを壊して再構築するのは大変だったと思います。
春から脱出できない構造は、却ってステレオタイプな「春」への待望を強め、新しい視点で春を書き出したと思います。異端の春とも言える今作を、恐れず書き遂げた勇気に感服します。

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