ターゲット
◆
「あんたらも俺たちと同じ口か?」
「起きたらここにいて………」
無限に広がる大地や海よりもさらに無限に続いているように思えたあの穴。何の意味があるのか説明もされぬまま、渡されたのは銀色のスコップのみだった。
そしてそのスコップを手にしばらく収容所を歩いていると、今話している男たちに会ったというわけだ。
「そうか、あんたらは拉致パターンか。」
「パターン?」
「ああ、俺たちはみんな妻子がいたんだけどな、貧乏でよ。どの家庭もとても幸せとは言えなかった。そんな時に急に政府の関係者と名乗るものが家にやってきてこう言ったんだ。」
「幸せになれるいい場所があります。」
「と、確かに言った。でも連れてこられたのはただの穴だらけの収容所。天国なんて言葉すら存在しない場所さ。」
後ろの男がそれを聞いて涙を流した。男は喉を枯らして必死に私たちに訴えた。
「妻子は真っ先に殺された、ガス室で………仕事ができないと勝手に判断された、その結果なんだ。」
「理不尽な世界だよな………俺たちはただ頑張って明日に向かって生きていただけなのに、なんでそれすら許されないんだよ」
「お気持ちお察しいたします。」
アーロンさんが頭を下げてそう言うから私も何となく頭を下げた。当然意味はよく知らない。
「ところで、失礼かもしれませんがあなた方は何族で?」
「収容所を管理しているあの巨大国の、すぐ隣にある小さな国の人間です。」
「そうですか、やはり………」
「フィアナさん、ここはサーンキヤ族のような比較的に小さな国に住んでいる人々をターゲットにした収容所のようです。」
「え、つまり。」
「流石にわかりますか?そうです、ここにいれば確実に殺されます。」
サーンキヤ族と白い大地。 学生作家志望 @kokoa555
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