マスク・ド・オークここにあり~リングで書くのは異世界譚~
藤井 三打
序
高校生による、高校生のためのプロレス。ハイスクール・プロレスリング。
その中に、怪物然としたマスクと巨体を誇る、マスク・ド・オークという名のレスラーがいた。
彼に潰された高校生レスラーは語る。
「あんなにヒドいプロレスラーは、古今東西あいつぐらいのもんだよ」
「プロレスラーなのに技を受けようとしないし、そのくせ攻める時は力任せでガンガン来る。戦った後、あざの痛みで数日間まともに寝られませんでしたよ」
「相手にに花を持たせようとしないから、アイツの試合は全部塩ですよ、塩。しょっぱくてしょうがない。さっさとリングから追放したほうが、みんな幸せなんじゃないですか?」
彼に好意的なファンは語る。
「いやー、一目惚れですね。あのすっげえ筋肉に、無茶苦茶な強さ。あの人のためだけに、試合を見に行く気になりますよ」
「うーん、技を受けないって言うより、並の技は通じないって感じですね。だいたい、あんだけ強そうな人がいいように技を受けまくるってのも、なんか不自然じゃないですか?」
「セコンドについてる、あのエルフのひともミステリアスで可愛いですよね。なんか話している内に、あの二人は異世界から来た本物のオークとエルフじゃないかって気がしてきましたよ」
彼と何度も戦っている高校生レスラーは語る。
「ありゃ強いっていうか、いっちゃん難しいヤツや。わかりあうことより、自分のやりたいことをぶつけてくる。ある意味、昔ながらのレスラーであり、スターなんやろ」
「なんて言うんやろなあ、別に技を絶対受けないってわけじゃないんや。ただね、安い技を意味もなく受けてくれるような優しさはないっていうか。まあ、アイツが技を受けてくれないって泣くヤツは、間違った方の役不足やね」
「要はレスラーはワガママ。そういうことを思い出させてくるヤツやし、調和を目的とするハイスクール・プロレスリングの理念とは真逆にいっとるね。え? なんだか大阪弁がおかしくないですかって? ハーッ!? コテコテの大阪風もとい大阪人レスラーに言う言葉やないやろ!」
十人に評価を聞けば、十種類の答えで返ってくる。マスク・ド・オークとはそんなプロレスラーであった。唯一ハッキリとしていることはと言えば――
今日も彼はリングで、オークの名に相応しい大暴れをしているのだ。
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