おじさんと呼ばれこの桜(はな)散りにけり

奇作にして玉稿。
カクヨムでもっとも衝撃を受けた作品のひとつです。

「桜の擬人化」というアイデアは珍しくなく、だいたい美女が当てはまるのですが、そこに「うまくいかなかった中年男性」を当てはめた作品は過去にあったでしょうか
だれも思いつきはしないのです。
それは儚いとも哀れとも思われていないから。

発想力と評される今作ですが、この作者がこういった作品をいくつも書ける背景は単に「思いつき」ではなく、人が見逃しがちな事象に心を向けられる……心の深度が深いからかも知れないといつも感じます。
だからおじさんは「自分を動画配信してお金を稼げ」と平然と言えてしまうし、主人公は「マフラーを渡してしまえる」のです。

現実は、冬のように冷たいかも知れません
だからこそ二人の間でひととき訪れた春が、空想性を伴って暖かく感じます

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