概要
「だから言ったろ? 彼女は永遠のベイビーちゃんなんだよ」
アメリカのミズーリ州にある古ぼけた田舎町。のんびりと時間は流れ、単調でなんの変化もない、そんな僕たちの住むこの町が、一度だけアメリカ中の注目を浴びたことがある。それは、マーマーレード色の髪のマリールーがファッションモデルの夢破れ、NYから生まれ故郷のこの町に帰ってきた翌年の夏のことだ。 前向性健忘――記憶を覚えていられないマリールーと友達になるために、ぼくらはお金を出し合ってインスタントカメラを贈った。そんなある日、町の画家ピカソの絵が紛失した……。
【紀州文芸振興協会 第一回Kino-Kuni文學賞「コエヌマカズユキ審査員特別賞」受賞作品】 (2017)
【紀州文芸振興協会 第一回Kino-Kuni文學賞「コエヌマカズユキ審査員特別賞」受賞作品】 (2017)
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- ★★★ Excellent!!!失くしてしまっても、また拾い集めればいい。探し物はわかっているのだから
忘却は神が与えた最大の恩寵、確かにそういう時もある。嫌なこと、悲しいこと、忘れられたらどんなにいいか。でも、忘れたくないことについてはどうだろう? 忘却は残酷、自分でコントロールなんてできない。あなたがどんなに大切にしたいものでも、きっと忘れてしまう時が来る。それは10秒後?明日?それとも今の自分がいなくなった時?
だから私はこうして書き残す、自分がこの小説に出会えた今この瞬間の気持ちを。そうしておけば、たとえそれを忘れてしまっても、自分のページを開けばいつでも出会えるのだから。あなたもこの小説を読んで感じたことを、ぜひここに書き留めてほしい。自分の気持ちを取り戻したい時が、きっと来るはずだ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!優しく、暖かく、陽だまりのように。
ぽかぽかと日の当たるお気に入りの木の根っこに座り、甘めのお茶を飲みながらページをめくる……。実際はストーブの火一つない寒い部屋でPCとにらめっこ状態の読書だったのに、その夢の方が本当だったと思うくらい暖かく、優しい時間を過ごさせて頂きました。
もしも図書館で「若草物語」や「赤毛のアン」「パール街の少年達」などが並ぶ海外文学の棚に本作が置いてあったとしても私は驚かなかったでしょう。
たった一万数千文字で形作られた世界には、陽だまりのような日々のささやかな幸せが溢れています。静かに始まるモノローグ、全てが収まるべき所に収まったと息をつける素敵なラスト。まるで天女の衣のような縫い目のない芸術に魅…続きを読む