言葉を失い、嫉妬する名作短編

花のように咲く「おじさん」と青年の交流が淡々とした筆致で描かれた短編です。
誤解を恐れずに言えば、どんでん返しや大きなヤマ場があるわけではなく淡々と流れます。
まるで春の空気のように。

でも、この作品を読まれた方は全員間違いなく言葉を失い、人によっては嫉妬します。
私のように。
その発想と完成度のあまりの高さに。

ドラマのように鮮明に映像が浮かぶ文章。
おじさんと言う、飄々としたそれでいて深い言葉を話すキャラクターも魅力。
何かを訴える訳では無い。
でも、一度読むと忘れられない。
フッと作品に対してアレコレ意味を解釈しようとしてしまう。

この作品は発想、キャラクター、文章表現のどれかがズレるとたちまち野暮ったい作品に落ちてしまうところを、時計のムーブメントのような緻密さによって、名作となっている。
私だったら駄作に仕上がってしまう。
そこに嫉妬してしまいます(汗)

個人的には筒井康隆さんの作品を読んだあとのような、不思議な満足感が得られました。

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