【あらすじ】
薄紅の花片舞う春の宵に出逢った少年“ササ”と少女“なよ竹”。
「あなた、あなたって、醜いわね。まるで化け物みたいね」
「――でも知っている?」
そう微笑む少女の唇は血に濡れていた――。
全8話。短篇・和風恋愛幻想譚です。
【おすすめポイント】
(1)なよ竹とササの歪で危うくも、ある意味完成された関係性
(2)妖しい程に麗しく広がる物語世界
(3)緊密に練られた美しい文体
見た目には正反対な二人。
――しかし、どこか似た“何か”を抱えてもいる。
そんな二人の関係性が、四季の移ろいとともに、
乾いたような口吻のササの語りで、
静かに。
時に残酷に、
そして時に、鮮烈な色彩美を感じさせながら語られていきます。
二人の住まう邸は竹林に鎖され、
外界の変化とは隔絶した二人の世界を感じさせて、
歪ながら、鎖されているが故に完成されているようにも感じられます。
そんな物語世界を支えるのは、
作者様の鋭い言語感覚で綴られた美しい文章。
是非、ゆっくりとご覧下さい。
眩暈を覚える程の濃密で鮮烈な読書体験が味わえる筈!
■こんな方に
☑どっぷり物語世界に浸りたい方!
☑濃い陰翳を感じさせつつも美しい和風ファンタジーが読みたい方!
☑歪な関係性に心惹かれる方!
世界観、言葉選び、そこから来る文章。
全てが一級品の様式美に満ちています。
私の中では梶井基次郎を読んだときのような、心の奥をざわつかせる衝動を呼び起こされるほどでした。
一度読み。
その後、再度言葉にして読み直しました。
綺麗な言葉は、かみ締めたくなる。
すぐに飲み込みたくない。
次に感じたのは激しい衝動。
この美しさを真空保存したくなるくらい。
そして、何でこんな美文が書けるのか。
悔しい。悔しくて仕方ない。
私もこの言葉が欲しい。
そんな衝動も感じます。決して暗い衝動ではなくシンプルに欲が。
もう最初のお月様の下りから鷲づかみにされます。
小説を書くのであれば、一度はこの作品に目を通したほうが良いです。
美しすぎてコピーは不可能ですが、自らの文章に与える影響は大きいはずです。
こういう作品に出会えるのでカクヨム様はやめられません。
右半身が醜くく焼けただれた少年と人を喰う美しい鬼の少女。
二人ともどこかずれていて、すれていて。同じ孤独を抱えている。
そんな二人の短くも尊い時間が、美しい四季の移ろいとともに描写されていきます。
心を通わせていくほど、人間と異形の絶対的な障害が顕著になって、切ないです。
優しくも残酷な時の流れ。
止めることはできないけれど、なにもかも諦めて終わってしまうはずだった少年に芽吹いた気持ち。
それはやっぱり美しいと思いました。
切なさの残る余韻も魅力的です。
改稿版前の作品を読んでとても印象深かったので、また読めてうれしいです!
仄暗いけれど、どこか温かみもあるダーク和風ファンタジー。
おすすめです!
顔の右半分は焼け爛れたよう。右目だけが大きく、唇は腫れている。右足は悪く、痩せている。主人公の少年の外見は、お世辞にも美しいとはいえません。
そんな主人公の少年は、彼とは対照的に美しい少女に拾われました。ただ、彼を拾った少女には、秘密があって……
本作は世界観や雰囲気を大切に描いた、和風恋愛ファンタジーの短編です。
見た目は対照的な二人ですが、社会のはみ出し者と言う意味では似た者同士。そんな二人が一緒に暮らすうちに、心を通わせていく過程が丁寧に語られます。
物語のいたるところに散りばめられた死と愛の描写が美しくも物悲しい!この切ない雰囲気がこの作品の一番の魅力だと思います。