第12話 戦いの果てに
竜騎士は怒りゆえか、はたまた失望ゆえか、頭を抱えてブルブル震えている。
そうだ、そのまま絶望して魔族の国に帰ってくれ!
俺は心の中で切に願った。
竜騎士の度重なる猛攻撃に耐え、頭を何度も岩に打ち付けたうえに流血している俺は、正直もう立っているだけで限界である。
というか、さっきから視界がぼやけてフラフラする。血を流しすぎたのかもしれない。
セリアも序列魔法を深めにくらったせいか、剣を支えにしてやっと立っている状態だ。
もし竜騎士が、また突進攻撃に切り替えてきたら、もう裁くことはできないだろう。
だが、それは竜騎士もまた同じ。
セリアの強烈なカウンターに加え、あれだけバンバン高威力の技を放っていて消耗していないはずがない。
頼む、どうか立ち去ってくれ……!
しかし、俺の願いは虚しく、竜騎士は再び上空に魔法陣を展開させる!
う、嘘だろ……!? こいつまだ序列魔法を放てるのか!?
「よりによって耐性のある魔法を放ってしまったとは。俺の失策だ。だが、それならば次の魔法を発動させればいいだけのこと。」
竜騎士の頭に撤退するという考えは全くないらしい。むしろ先ほどより、さらに殺気を増している。
「貴様らは絶対に逃がさん。俺が、俺が俺が俺が、いまここで!! 確実に息の根を止めてやるッ!」
竜騎士は半狂乱に叫ぶ。
先ほどからどうも竜騎士の様子がおかしい。正気ではない、まるでなにかに取り憑かれているかのような狂気を感じる。気のせいだろうか。
そうこうしているうちに、竜騎士は再び槍斧を頭上高く捧げ持つ。呪文を発動する気だ!
次、序列魔法を食らえば今度こそ一貫の終わりだ。
俺とセリアは目を閉じ、絶望に身を固くした。
のだったが。
バキン!
何かが割れる音が響く。
おそるおそる上空を見上げると、竜騎士の槍斧が粉々に砕け散っている。
それに合わせて上空の魔法陣が消え、なんと乗っていた竜も消失し、竜騎士は落下する!
あの竜、魔法で具現化してたのかよ!
「ガハァッ!!」
竜騎士は地面に落下し、低いうめき声をあげた。
あの高さから落ちて死なないって、なんという頑丈さ。
だがさすがにダメージが大きかったのか、膝をつき立ち上がれないでいる。
これまでの蓄積と合わせて、もはや戦闘不能だろう。
「魔力切れか。」
セリアは静かに竜騎士に歩み寄る。とどめを刺すつもりだ。
「あれだけ高威力の魔法を何発も放てば、当然そうなるだろう。魔法のエキスパートである魔族が、そんなこともわからなかったのか?」
竜騎士に向かってシュッと剣を突き付ける。
だが、竜騎士はその事実に自分自身が一番驚いているようだった。
何度も頭を振り、
「俺は……一体何を……?」
とブツブツつぶやいている。
そして俺は気づいた。先ほどまで竜騎士が放っていた殺気や怒気が完全になくなっていることを。
まるで別人のようだ。なにかがおかしい。
だが、セリアはそんなことはお構いなしに、竜騎士の首めがけて剣を振り下ろした!
「ちょっ、待って……」
俺が静止しようとした瞬間、
スキル発動ーーー
なんと竜騎士はすさまじい脚力で上空に跳躍し、そのまま逃走をはかる!
「フッ、まだこんな余力を残していたとはな。だが、逃がさん!」
セリアは何を思ったのか、騎士の象徴である剣を捨てた。
「やつは危険すぎる。我がマグダリア聖騎士団の名にかけて、ここで仕留める!」
セリアは捨てた剣の代わりに、背中に隠し持っていた二対のダガーをスラリと抜き放った!
「これは禁じ手だったが、致し方ない」
スキル発動ーーー
セリアはものすごいスピードで前方に飛び出した!
とんでもない身軽さで木の幹を駆けあがると枝に飛び乗り、弾かれたように上空へ飛び上がって、瞬く間に竜騎士に迫る!
まさか追いつかれるとは思ってもみなかったのだろう。
竜騎士の隙だらけの背中に、セリアはトドメの一撃を放つ!
奥義ーーー
「グァァァァァァッ!!!!」
セリアの放った二連撃が見事にクリティカルヒット!
竜騎士は叫び声をあげ、森の中に墜ちていったのだった。
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転生ゲーム開発者のクソゲー異世界改変冒険譚~史上最強のチート能力を授かったが結局大切なのは「友情努力勝利」だった件~ 北原黒愁 @kokushu
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