ドラえもん方式とは?

 さて、ドラえもん方式を語る前に、みなさんは漫画アニメのドラえもんを見たことがありますか?

 なんとなく最初の導入が思いつくでしょう。即興で書いてみます。


のび太「ドラえも~ん! ジャイアンとスネ夫がカクヨムのファンタジージャンルに、長文あらすじタイトルちょいエロ異世界転生モノをぶち込みまくって、ファンタジーだけじゃなく全体ランキングを埋めて他ジャンルの入り込む余地がないよ~!」

ドラえもん「仕方ないなあ。『AI小説~』!」

のび太「AI小説?」

ドラえもん「人工知能が面白い小説を学習して人間よりすごいのを作っちゃうんだ。さっそくやってみよう!」

のび太「何か書きだした。VRMMORPG? SF版の異世界転生ってこと? でもメタバースのゲームなんてもう全然日常だし、科学的考察もテクノロジーが社会に与える影響も書かない内容なんて既存のSF作家に怒られるんじゃない?」

ドラえもん「そういう新規を受け付けない古典愛好の厄介な老害がSFの衰退を招いているんだよ。君の大好きな映画マトリックスだって『この世界が仮想現実だと気づいた俺はチート能力を使いこなし救世主と呼ばれちゃいます』ってタイトルでもおかしくないんだから。まずは若い読者を増やしていかなくちゃ。投稿してみよう、ソレ!」


 ……という感じでしょうか。例えに個人的怨念がありますが、ドラえもんは大体こんなパターンで始まりますよね。困ったのび太と秘密道具を出すドラえもん。

 この後の展開としては見事AI小説がヒットしてジャイアンとスネ夫にランキングで勝つのですが、調子に乗ったのび太がAIを使って小説を大量に乱発し、さらにそのAI小説を学習するので似通ったもの以外は生み出せなくなる。AI小説で飽和したランキングを眺めながら、結局人間がちゃんと監修しないと受ける作品にはならないんだなあトホホというオチになることでしょう。


 ドラえもんもこち亀も銭天堂も、ほとんどのエピソードがこんな流れです。しかし毎回確実な面白さがあるので、マンネリというより安心感があります。

 簡単にまとめてみると以下のテンプレートになります。


1.課題が発生する

2.課題を解決するモノが現れる

3.モノを使ってみる

4.使ってみた結果(オチ)


 なんと、たったこれだけなんです! 実は起承転結も三幕構成もほぐしていけばこんな中身なんです。セットアップとかインサイティングインシデントとか伏線回収とかは一旦忘れましょう。なによりシンプルでわかりやすい展開は読者にも受け入れてもらえやすいですから。

 では、項目ごとに解説していきます。


1.課題が発生する


 まず、現状に満ち足りている人物にドラマは生まれません。そういう人が主人公でも、読者は興味を惹かれません。自分より幸せな人の話を聞かされてもウンザリしますよね。え? 一緒に幸福感を味わえるだって? わけがわからないよ……。

 というわけでのび太でも両さんでも作者のあなた自身でも誰でもいいので、ちょっと不幸になってもらいましょう(ゲス顔)。最初から不幸でも、幸せから不幸に転落しても構いません。不幸のレベルも、死にそうなくらい危険でも、ちょっと面倒くさいことになったなあくらいでも大丈夫です。

 とりあえずこの不幸を『課題』として捉えて、解決する方向に動き出しましょう。受け入れたり諦めたら、やはり物語は始まりませんからね。


 さて、タイトルにアイディアがなくてもと書きました。別にアイディアは要りません。

 ですが、あなた自身、何か悩みや困りごとはありませんか? 些細なことでもいいですし、どうしても思いつかなければニュースやSNSを眺めて自分の興味ある『課題』を見つけてみましょう。これが最初の一歩です。


【例】

・忘れ物が多いのをなくしたい

・片思いしてる人に恋人がいるかも

・高い税金が払えない


2.課題を解決するモノが現れる


 さあ、ここからちょっと頭を使います。ドラえもんの秘密道具や両さんのビジネスアイディアのように、課題を解決させるモノを登場させましょう。

 具体的なモノである必要もありません。助けてくれそうな人でも、意外な出来事や計画でも良いです。

 難しく考えなくて良いですよ。どちらかと言えば自分がワクワクするような解決方法を自由に妄想してみましょう。突飛すぎてリアルじゃなくても、どうせフィクションだから大丈夫です。


【例】

・忘れ物が多いのをなくしたい→メモが常に視界に入るメガネを手に入れた

・片思いしてる人に恋人がいるかも→神様が時間を巻き戻してくれる

・高い税金が払えない→宇宙人との外交貿易が始まり国が儲かり、政府が無税金にすると言い出した


3.モノを使ってみる


 さあ、実際に課題を解決するために動き出しましょう。さっさと解決してもいいですし、ちょっとうまくいきそうと期待させる展開でもOKです。

 ここでも、またちょっと頭を使ってみましょう。すんなり全部が解決するだけでは話の面白味に欠けるからです。

 具体的には、


・解決のための行動がエスカレートしていく

・解決の結果に予想外の副作用も起こる


というどちらか二点を反映させてみてください。


【例】


・メガネのおかげで忘れ物がなくなって、なんでもかんでもメモに頼るようになった

・恋人ができる前に急接近して誰よりも仲良くなることができた

・無税金のおかげで自分の金は全部自分のために使える! 宇宙人の技術で国も栄える! 宇宙人なしじゃ生きられない!


4.使ってみた結果(オチ)


 というわけでお話を締めます。ここで読者に面白いと思ってもらえるポイントは、いい意味で予想を裏切ることです。3で出たエスカレートした部分や副作用を活かしてみましょう。


【例】


・ある日メガネを無くしてしまう。そこには自分に関する全てが記されており、何も思い出せない人間になってしまった

・告白したら、仲良くなりすぎて友達としてしか見れないと断られた

・宇宙人が突然貿易を止めて、税収のないこの国は道路整備も社会保障もできないまま崩壊する。これは暴力を使わず反抗されることもない静かな地球侵略だった


 ……うわ、全部バッドエンドやんけ。これは僕の根暗な人間性の問題です。

 ドラえもんやこち亀ではオチをそこまで不幸にせず、反省した主人公が元の状態まで戻る方法が多いですね。のび太なら道具に頼らず自立して、両さんは懲りずにまた無茶をして部長に絞られるでしょう。

 ハッピーエンドにする場合は、3で失敗する方向にして4で本当の解決をさせる、もしくは4の失敗の後にさらに別の方法で解決させることもできます。


 僕の作品はバッドエンド率が高いのですが(ちょっと悩み)、最後にまだ救われるものとして

・百合の間に挟まるサメ(https://kakuyomu.jp/works/16818023214022795768/episodes/16818023214022842196

・ココロの終焉(https://kakuyomu.jp/works/1177354054884814195/episodes/1177354054884814230

・愛日(https://kakuyomu.jp/works/1177354054882775798/episodes/1177354054882775801

・魔法少女も今じゃ社畜(https://kakuyomu.jp/works/1177354054881181577/episodes/1177354054881181587

・赤い殺人鬼と青い吸血鬼(https://kakuyomu.jp/works/1177354054881085304/episodes/1177354054881085305

・ジュリエットは君だ!(https://kakuyomu.jp/works/1177354054881019148/episodes/1177354054881019149

・百万回生きても猫(https://kakuyomu.jp/works/1177354054880683564/episodes/1177354054880683567

・おっぱいちゃん(https://kakuyomu.jp/works/1177354054880372256/episodes/1177354054880372276

 ――が、あります。

 参考になるかはわかりません、よろしければご一読ください。


 ちなみに、1と2の情報量を多くしてみたり、1から4をさらに繰り返しても短編小説からボリュームある中編小説にすることができます。現代ファンタジーやSFなんかがこの方式だとサクサク作れますが、応用して設定を捻ればミステリーやホラーも書けることでしょう。

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