赤い殺人鬼と青い吸血鬼
深夜太陽男【シンヤラーメン】
第1話
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これは私が妹の手によって殺されるまでの話である。
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私と妹は双子だ。他のそれと違うところは、私は心臓及び五つの臓器を持たずに生まれてしまったことだ。内蔵は二人分ないが体は二人分、妹は五体満足であったがそのしわ寄せを受けたのは私だった。人工心臓など代用品で生きながらえた私であったが、健常者との差は激しく、特に自身の体で血液を必要量まで生成することができないため輸血が必要不可欠であった。しかしこの国の宗教観では異物を体内に取り入れることはひどく不潔な行為と認識されており、輸血治療もまだ発展途上であったため病院から支給される血は僅かなものだった。周りの者は私を『吸血鬼』呼ばわりし、風評被害から逃れるため私たち家族は人里を離れて山の奥で暮らすようになった。
体の弱かった母は私たちを出産した後に亡くなってしまい、家族は父と私と妹だけだった。私の治療費は莫大なもので、そのせいで生活はとても困窮していた。父は日が昇る前に仕事に出かけて日が暮れてもなかなか帰ってこなかった。幼少期から妹は元気そのもので毎日飽きもせず森の中を駆け回っていた。私は家の中を歩くだけでいっぱいいっぱいな状態であるため、父の書斎にあった小難しい本を一日中読んで過ごしていた。妹は健やかで美しい顔立ちであった。私は真っ青な肌に病的にこけた頬、鏡を見るのが億劫であるほど醜かった。妹を見るたび、妹のことを考えるたびに私は毒づく。妹なんて大嫌いだ。
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私にないもののほとんどを妹は持っていたが、私も妹にないものを一つだけ持っていた。その変な能力は些細なきっかけで気づいた。
いつものように父の書斎で私は読書をしていた。たまたま妹も同じ部屋にいてぬいぐるみとの会話に夢中であった。私は一冊読み終わり新しい本を手に取りたかったが本棚まで距離があるし、次のお目当ての本はやや高いところにあった。面倒くさい。同じ双子でありながら妹のほうがやや身長が高いし、高いところにあるものも身軽にジャンプして取れる。私はと言えばつかまり立ちで体を支えるのがやっと、高いところにあるものを取ろうとすればひっくり返るのがオチである。妹に本を取るように要求する。いつもならば簡単に返事するのに今日はぬいぐるみに夢中であった。かわいいのでわがままが許されると思っているこの性格。だから妹なんて大嫌いだ。
何度も妹に命令するが無視、私は苛立って手元の読み終わった本を投げてみるが妹まで届かず足元に落ちる。虚しい。私は妹に向かって無言で念じる。『その体を私のために動かせ』。すると妹の体の動きが止まったのだ。そして本棚から一冊本を取り出し私に差し出した。私は受け取る。急に素直になって私はキョトンとしていると妹も同じような表情をしていた。自分の行ったことに理解が追いついていないようだ。なかなか妹は私の前から動かない。
「もういいよ。どっか行きなよ」
私がそう言うと妹はビクンと体を震わせて、自分の体をベタベタを触りだした。拳をグーパーグーパーと繰り返し動かす。ほっぺを叩く。そして大声で泣き出した。
「体が勝手に動いたー!」
意味不明である。こんなことを言って興味を引こうなどとする性格が大嫌いだ。しかし私が思念するタイミングと同じでこの行動はしっくりきすぎである。
私は妹で実験をしてみることにした。野うさぎを追いかけて走る妹に『こけろ』と念じると妹は盛大に転び大泣きした。大好きな食事時間、『待て』と念じればよだれを垂らしながらも微動だにできずにいた。解放してやると泣きながらご飯を口に掻き込んでいく。汚い、嫌い。積み木のおもちゃを高く積み上げて誇らしげにしている妹に『壊せ』。豪快に積み木を吹っ飛ばした後、妹は号泣した。滑稽な行為、そして泣き喚く妹を見るたびに私はゾクゾクとした快感に浸った。
何回かの実験の結果、私は大きな動きなら妹を操れるらしいことがわかった。父や遊びに来る農夫に念じても何も起こらず妹だけが私の思念に応えた。あと、妹が私の視界の中にいなければ妹は制御できなかった。それと細やかな動きや難解な内容を命令しても、それが妹に理解できない範囲のことは実行されなかった。
妹に臓器を持って行かれたが、その体は私の脳とつながっているような感覚であった。双子の中でも特殊な、脳と体が混線してしまった事例なのだろう。しかし妹は私の体をコントロールできない。私が完全に優位。健常だからと妹に劣等感を抱いていたが、もうそんな必要はなかった。
妹の両手を支配して、包丁を持たせその切先を喉元に突きつける。その怯えた目つきがたまらない。
「このことは私とあんただけの秘密だからね。お父さんや誰かにバラしたらすぐにこうやって殺すから。あと私には常に従順でいること。わざわざ能力を使わせないでよね。返事は?」
懇願する妹の目。肯定以外ありえない。体を解放してやると妹は魂が抜けたかのように崩れ落ちた。包丁がカラカラと音をたてて床に落ちた。
「じゃあ、あんたの血をちょうだい。忠誠の証を見せてよ」
動揺する妹。震える手つきで包丁を掴む。しかし自分の体のどこを切ればいいのかわからないようだ。バカ、どこを切ったって痛いのだというのに。
「嘘よ。あんたの血をもらうくらいなら死んだほうがマシ。さっさと失せて」
妹が困り傷つきそして泣く姿こそ私の人生にとっての愉悦であった。
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私たちは少女と大人の間である年齢になった。父にこれからどうしたいかと私たちは問われた。妹は働きたいと言い、私は学校に行きたいと言った。頭の足りない妹が働けるとは思えず、生活費の捻出に苦労しているのに私を学校に通わせる金もないため父の顔色は険しく曇った。優しい父は思いつめ、酒浸りとなった。
「どちらか一人の願いを叶えよう」
酒乱した父の結論はそれだった。そしてどちらを選ぶかなんて考えるまでもない。美しく皆に愛される方を生かし、醜くただの金食い虫は消すに限るのだ。父の思いは手に取るようにわかった。だから、私の首を必死に締め付ける父の表情を見ることができなかった。優しい父の心情を想像してしまえば、心が壊れてしまう。それでも私は心中唱えてしまったのだ。
『助けて』
首の圧迫から解放されて視界が白くチラつく。それが収まると、父の上に馬乗りになり血の付着した包丁を握りしめる妹の姿が見えた。
「私が全部やったから」
妹は静かに泣きながらつぶやいた。当たり前だ、私は父を殺せだなんて望んじゃいない。妹なんて大嫌いだ。私が吸血鬼なら妹は殺人鬼である。この夜、私たちは震える体を互いに抱きしめ合いながら慰めた。双子は運命を共にしてどこまでも堕ちれる。そんなことを実感しながら夜が明けた。父の遺体を処理して荷物をまとめて家を燃やした。街へ行こう。新しい生活を始めよう。
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少ない手持ちでなんとか貧乏通りの小さな部屋を借りて、私たちは街で暮らし始めた。妹は元気なのはいいが頭が弱い。職を中々見つけられず、下手すればお金を騙し取られて帰ってきた。私はそのたびに妹を叱咤して世の理を説くハメになる。何度も繰り返してようやく街の肉屋に拾ってもらった。私は雇われるはずもなく、そもそもまともに部屋から外出できないので妹が拾ってくる古本を読んで時間を潰すか、貧乏通りの学校に通えない子供たちに読み書きを教えて過ごした。
妹はバカだが腕っ節は男並みで、仕事のミスはあるものの愛嬌の良さから周りに気に入られているようだ。『ジャック』だなんて男の名称で呼ばれてからかわれて嬉しそうにしている。私は子供たちから『メアリー先生』と呼ばれてはいるが虚しさのほうが大きい。実際生活費を稼いでいるのは妹なのだから。子供の時のように妹をいじめてやりたいが、そんなことをしても生活に困るだけだ。妹の笑顔が増えるたびに私は憂鬱になる。妹なんて大嫌いだ。
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「肉屋の息子さんと結婚するかもしれない」
街で暮らし始めて一年後、妹がそんなことを言い出した。私を置いて勝手に幸せになるとしか聞こえなかった。
「そんな話は聞きたくない。そんなことより血をもっともらってきなさい」
成人に近づくほど血液の必要量は増えるのに、病院から支給される量は子供の頃と変わらなかった。それ以外は個人的に献血をお願いするしかなかったが、理解のある人はほとんどいなかった。『吸血鬼』と批難されるのを恐れて頼める人も全くいない。切羽詰った状況である。それでも私はこの無理難題を妹に押し付ける。そうすれば妹は困った顔をするのだから。血液なんか本当はどうでもいい、妹が私に束縛されているこの状況こそが糧である。他の男と幸せになろうなどと言語道断だ。
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街では女性の変死事件が増えていた。内容は猟奇的で、遺体はバラバラにされていたり内蔵の一部が発見されなかったりといったものである。街は不穏に満ちて、女性は夜遅くに出歩かないよう警戒された。同時期、新聞社に臓器提供や輸血治療を推奨するメッセージが寄せられたためこの事件と関連があるのではないかと疑われた。犯人像は様々な推測が飛び交い、『切り裂き男』という通り名がつけられた。
こんなにも騒がしなる街の情勢で、妹は日が暮れても働いて帰ってくるため私は忠告した。最近妹は疲れが目立ち、どうやら怪我も増えていて血色も良くない。私以外の人間が妹を傷つけるのは私の体を汚されるようで許せなかった。
「ごめんね。今日はこれだけもらえたから勘弁して」
妹はそう言って血液の入った瓶を差し出す。そんなものはいらないから私のそばを離れるな。身を挺して幸せを維持しているつもりかもしれないが、本当に大事なことがなんなのかまるでわかっていない。だから妹が嫌いなのだ。毎晩どこかへ行かないように必死に妹を抱きしめるのに、朝になればスルスルとどこかへ消えてしまう。ベッドには微かな温もりだけ。姉をこんな気持ちにさせるだなんて、妹のくせに。
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肉屋の息子と名乗る男が部屋を訪ねてきた。休日で店は休みらしい。妹は買い出しに出かけており部屋にはいなかった。
「あなたのことは妹さんから聞いてます」
男は成人していたが若く、とても紳士的であった。妹と結婚したいが妹はお荷物の私を気にして返事をしないと言う。男は私を含めて養うつもりだと言い切った。
「私は吸血鬼と呼ばれていて関わるとロクなことがありません。こんな体で働けず通院費で金を喰うばかり、それ以外にも血液など手に入らないものを要求します。考え直したほうが身のためです」
「妹さんからもそれは忠告されました。それでも僕は彼女と、あなたとも幸せになりたい。僕なりに考えて行動しました。あなたを救うための治療法を医者に聞いても、この国の風潮では異端扱いされて迫害されると。新聞社に寄稿しても煙たがられるだけでした。誰も頼れないのなら僕自身の手でやるしかない、と」
男は持ってきた鞄から赤い布袋を取り出した。馴染みのある色、それは血の色だ。布袋から男が取り出したのは拳大の臓器、心臓。他にも人間のものと思われる内蔵を床に落としていった。
「医者ほどではないですが肉体には詳しいので安心してください」
何が安心できるものか。男は食肉を捌く器具を右手に持ち私に迫ってきた。この男は、狂っている。
「妹さんは周りに頭を下げて血をもらおうと必死でした。当然もらえるわけがなく、毎日自分の腕を切り、瓶を血液でいっぱいにしていました。このままでは貧血で倒れてしまう。そんな彼女を救うためには、あなたを救うには、これしかないのです」
男は左手で私の首を締める。父に殺されかけたあのときと一緒だ。正義は狂っているが美しいのかもしれない。これも真理なのかもしれない。バカでもわかることだ。生き残るのは妹の方で、消えるべきは私の方なのだ。
視界の端に妹の姿が見えた。こんなときでも私は妹の困った顔が、傷ついて泣く姿が見たかった。ずいぶんと久しぶりに念じてみた。
『幸せになって』
姉思いの優しい妹は私を見殺しにしてくれるはずだった。それなのに妹は走り寄り、男を私から引き剥がした。男は呆気にとられて隙をみせ例の器具を落とした。妹はそれを使い男の首筋をかっさばいた。部屋は赤く染まる。
「お姉ちゃんはいつも難しいこと言うから、私バカだからよくわかんなんくて。またこんなことになっちゃったね」
これだから妹は嫌いである。手間をかけさせる。そんな顔見たくない。
『私を殺しなさい』
「いや!」
しかし妹の体は逆らえない。鋭利な刃物は私の胸を一突きした。絶望する妹の表情は今までで一番素晴らしかった。その顔が見たかったの。
「あんたの血をもらってただなんて反吐が出る。全部返す」
私は妹の唇を塞ぎ吐血を無理やりねじ込んだ。
「あんたのことが大嫌い。だから最後の意地悪を、独りきりで勝手に幸せになりなさい。そして憎い憎い私のことを忘れないこと。毎晩夢に出てあんたを困らせてやる」
「……私、お姉ちゃんのこと大好きなのに」
「バカじゃないの。だからあんたのことが嫌いなの。嫌い嫌い、大嫌い」
言いたいことは山ほどあるのに口を出るのは裏返した言葉たちばかりだ。意識が消える前に、私はもう一度最後の願いを唱える。
『幸せになって』
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これは姉が生きていたときの話である。
姉と私は双子であったが、姉は臓器が足りず人工的な代用品で補っていた。生まれるときに姉は私に全てをくれたのだ。姉は世界で一番優しい人間だ。
姉は美しかった。幼少期、森の中をはしゃぎ回り泥だらけの私に比べて姉は外には出ず読書して過ごしていた。白く透き通る肌にいつも見とれてしまい、父の話に聞く神様とはこの人のことなんだと思った。
姉には不思議な力があった。姉は私の体を操れたのだ。最初はよくわからなくて泣いていたが、自分の体が勝手に動くのは姉の仕業だとそのうちわかった。
『言う通りにすればこの力は使わない』
いじわるもされたが、姉は優しいので私を自由に扱ってくれた。それどころか私が壊れかけの橋を渡ろうとしたときに体を止めてくれたり、手元がおぼつかない私に代わって私の両手で料理をしたりと、いつも姉は私を気にかけていた。
○
ある日、父が姉を殺そうとしていたので、私は父を殺した。このとき私の体は自分の意思で動いたのか姉のものだったかはわからないけど、そんなことはどうでもよかった。私は姉がいないと生きていけない。バカな私でも答えはすぐにわかった。ことが終わると姉はお互いを『鬼』呼ばわりした。なんのことかよくわからなかったが、姉と同じになれたことが私は嬉しかった。
○
それから私たちは山から街に下りて暮らし始めた。体の弱い姉を働かせるわけにはいかないので、バカだけど私が働くしかなかった。しかしバカなので失敗ばかりで仕事が中々見つからなかった。それでも姉は呆れながらも私を応援してくれた。どういう言葉を使えば人によく思われるかとか、正しいお金の使い方を覚えて騙されないようにだとか。おかげで私は街の肉屋さんの下で働かせてもらえることになった。周りには優しい人が多く、私の頭の悪さを受け入れてくれた。それに甘えないように私は頑張った。小さいときから無駄に遊びまわっていたせいか体力だけはあり余り、女ながらも肉体労働についていけた。帰れば姉は子供たちに先生と呼ばれて、なぜか私まで誇らしく思えた。古い本を持ち帰ると姉は喜んでそれを読んでくれた。姉の本を読む横顔が綺麗でとても好きだった。私はそんな生活が幸せだった。
○
肉屋さんの店長さんの息子さんに結婚を申し込まれたときは驚いた。息子さんは優しく仕事ぶりも真面目だった。生活の安定と女としての幸せとやらが手に入る、しかしそのためには姉のことを受け入れてもらわなければならない。昔から姉のことを話すと人から悪口を言われたりするが、そんなことはなく息子さんは一緒に考えてくれた。
姉に結婚のことを話すと不機嫌になってしまった。姉に必要な血液を手に入れられないのに自分だけ幸せを手にれようなどと思い上がりであることを痛感した。私が幸せになるためには姉が幸せになることである。息子さんにも協力してもらったが血液は中々手に入らずであった。姉に嫌われるのを覚悟して、私は黙って自分の血を姉に与え続けた。これくらしか私にできることはなかったのだ。
○
ある日のこと、お仕事は休みで私は街に買い出しに出かけていた。帰ってきてみると息子さんが姉を襲っていた。息子さんの考えも姉の思いは汲み取れなかった。ただ、私の生涯に姉は必要不可欠でそれを邪魔する存在はなんであろうと排除するだけであった。息子さんを殺すことにためらいなどなかった。
それなのに姉は私の体を使い、残酷なことを強いてきたのだ。姉の命令で、私は姉の繊細すぎる体を壊してしまった。姉は私との繋がりを断ち、そして幸せになれと言う。そんなことありえない、姉のいない幸せなど。冷たくなっていく姉は最後まで優しかった。
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話はもう少しだけ続くのである。病院に搬送された姉は助かる見込みがほとんどなかった。しかし医者は言った。
「たった一つの可能性がある。この国の倫理観では考えられないことだが、この体に適応できる臓器が提供されれば存命できるかもしれない。しかし成功する保証はない」
私はバカなので難しく考えなかった。どのみち姉を失ったままでは幸せになれない。それよりかはこの体で一緒に生きられるのならそれでいい。嫌われてもいいから、今度は私が姉に返す番なのだ。
残念なのは手術が成功したかどうかを私が見届けられないことである。だからこの手紙を姉が読んでいることを願うばかり。そして伝えたい思いはこれだけである。
幸せになってください。
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バカじゃないの。だからあんたのことが嫌いなの。嫌い嫌い、大嫌い。私はこの手紙にそう返事を書くだろう。私はこの先、吸血鬼とか怪物とか呼ばれて生きていかなくちゃいけない。おまけに独りきりで、不満をぶつける相手がいないのだ。こんな状況でどうやって幸せになれと言うのだ。辛くて辛くて涙が止まらない。姉をこんな気持ちにさせるなんて、妹のくせに。
生まれて初めて感じる本物の心臓の鼓動は、とても愛おしかった。
赤い殺人鬼と青い吸血鬼 深夜太陽男【シンヤラーメン】 @anroku
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