喪うことは、果たして「終わり」なのか

とあるひとつのお菓子に端を発し、改めて照らし出されたのは、妻に先立たれた老紳士に遺された、決して消えない想い。


こちらは、作者様の代表作「領主館シリーズ」の掌編のひとつです。
シリーズという括りですが、前述の通り、どの物語も掌編なので、初めての方もすんなり読めるはずです。

恋愛や成長、時には簡単にまとめられない様な複雑な思いをテーマにするこちらのシリーズですが、この物語では、喪失と再生に焦点を当てています。

生きている以上必ず訪れる喪失と、どう向き合っていくか。
扱うには非常に難しいテーマですが、卓越した言葉選びと無駄のない筆致、加えてちょっとしたユーモアを交えて重くなり過ぎないところなど、作者様の巧さがぎゅっと詰まった形に仕上がっています。

安易な鼓舞でもなく押し付けでもない、作者様ならではのしなやかで心強い答えを、是非味わってみて下さい。

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