このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（123文字）

　色々な種類の「怖さ」が書かれた短編集です。しかもありがたいことに、話ごとに、怖さの目安として☆マークがついてるのです。

　ただし、☆マークが少ないからと言って、安心してはいけません。読む時間帯は気を付けて下さい。夜中に読むと、怖さが倍増しますので。

　

プロの方じゃないの？と思うほど読み易くて文章が綺麗。
ただ怖いだけでなくどのお話も読後感が良いです。
なのに何故か面白かった！次の話！だけにはならない後引く「何か」の残るストーリーが多いのが魅力です。
ちなみに私は「チャペル　ユートピア」の話をやたら読み返しています。「何か」を見落としているような、他の「何か」が幕裏であった気がして仕方がない…。
どのお話も練られてるのに更新頻度が高いのが読者には嬉しい。

作者のここプロ様は、カクヨムにおける短編ホラーの旗手の一人と言ってしまって良いかと思います。こちらの他、「奇箱」という短編集も執筆されていますので、構成の巧さは言わずもがなです。

こちらの短編集、基本的には独り語りのオーソドックスな形を採りながら、驚愕なのはその展開の豊富さです。
どうにも救いのない怖さから、異世界に足を踏み入れた様な底知れない不安、この先どうなったのかと心配になる想像の余地…等、一話、或いは数話に渡ってどっぷりと恐怖に浸れます。
個人的には、想像力を掻き立てられる言葉や描写がとにかく秀逸に感じます。たった一言、たった一行で突然ぞわりとさせられたりするんです。

同時に、と特色のひとつでもある多彩なオチにも言及したいのですが…あまり語り過ぎてしまうのも、怖さを削いでしまいます。
先ずはどうかご一読下さい。思わず息を呑んでしまう一話が、この中にはきっとあります。

ひとつたりとも捨て話がない、まさに色とりどりの最悪です。
怪談というものの厭さにフォーカスし、オチで今まで読み進める内に感じてきた不穏不安のすべてに"答え合わせ"とばかりの最悪がぽんと出てくる。
読み終えた時のうわっ……と背筋が寒くなる感覚と、ふとした時に思い出してはそれがよみがえる感覚。これを求めてホラーや怪談を読み漁っているのだなぁ、としみじみ実感できる一作。
個人的な一押しは第4話『針ヶ瀬レジャーランド女児失踪事件』です。本当に怖すぎるこれ。

ちょっとの油断や偶然によって遭遇するホラー。
事実を伏せられた不気味さと、明かされた真実による恐怖。
語り部やお話のその後は、一体どうなったのか。

ほんとに体がゾワッとします。
シンプルな文章とシンプルな描写、ソフトで親しみやすいな語り口なのに読んでるこちらの体にまで恐怖の感覚を呼び覚まします。

続きが楽しみです……((( ；ﾟДﾟ)))

本作のホラー、個人的にとても印象に残ります…夜寝る前やお風呂で頭を洗っているときに思い出しそうな、そういう意味での「印象に残る」です。
ただ読むだけではなく、ふとした瞬間に思い出してしまう、脳みそに直接焼き付けられるようなホラー短編をお求めの方、本作がおすすめです。