少し前から、初めて覚えた言葉かの様に、世界が「多様性」を繰り返すようになりました。互いの個性を尊重する考え方だそうです。つまり「みんなちがってて、みんないい」と。
嘘っぱちもいいところです。「みんな」と「ちがう」人間に与えられるのは、奇異の視線と大きすぎる距離。個人的に、苦しむ人を長く見てきましたし、きっと今後も、苦しみ悩む人は減らないんだろうなとも思っています。
この物語では、主人公が一人の少女と出会って、これまでの「ふつう」から脱却します。登場人物はまだまだ子供ですが、年齢に添った瑞々しい感情が、生き生きと、新たな価値観を彩ってくれます。
本当に難しいテーマですが、作者様の筆致に漲る希望が、読後感を熱く清々しいものにしてくれます。
彼の様に、一人ずつがひとつずつ、少しでも気付いていく事。これが重なっていって、初めてきっと世界は変われます。難しい事かもしれません。でも、不可能でもないはずです。
まずは「ふつう」が何なのか、この物語を通して見つめ直すきっかけになってくれたら、こんなに嬉しい事はありません。
是非、ご一読下さい。