Ⅲ さだまさしさんの映画に関するエトセトラ

第3話 映画らぶ

 さだまさしさんも映画が好きなようです。


 周囲の動きで撮影された映画もありましたが、これから語らせていただくのは、さだまさしさんの深く関わったものです。


 よく聞く話ですが、「さだまさしさんの歌詞はまるで小説のようだ」と物語性について触れられます。実際譜面を読まなければ、どの旋律にどの歌詞がのっているのか詳しくは分からないこともあると思います。初期に発表したシングルレコード『無縁坂むえんざか』(1975年11月25日発売・グレープ)ですが、元々小説の冒頭だったとの話があります。それもデビュー前に作られたそうです。こうした世界観がいつしか映像と音楽との融合をもたらしたのかも知れません。


 本作について、聖地巡礼のつもりは全くなかったのですが、私が東京とうきょう大学だいがく附属ふぞく病院びょういんから上野うえの方面へ抜けて一時帰宅する際、まだ子どもに恵まれる前、夫の市松いちまつ緑青ろくしょうさんに道を案内されて登ったのか下ったのか坂を行きました。「ここが無縁坂だよ」と、立札を指してくれたのも緑青さんです。結婚記念日によく入院していました。そのときはまだ若かりし八年目で、二人で上野の百貨店に流れ着くとネックレスを贈ってくれました。


 原作のある映画、『べイカロスのつばさ』(1980年1月26日公開)で、主演、音楽監督を担当をしたのが、映像とドラマと音楽との出会いだったと思われます。さだまさしさんは、『道化師どうけしのソネット』(1980年2月25日発売)を主題歌にし、キグレサーカスの協力のもと主人公「栗山くりやまとおる」役でピエロを好演しました。監督は、森川もりかわ時久ときひささんです。


 その後、お父様の想いもあり、ドキュメンタリー映画、『長江ちょうこう』(1981年11月7日公開)では、監督、脚本、音楽、主題歌を担当し、『生生流転せいせいるてん』(1981年9月25日発売)としました。様々な事由により多大な借金をしてしまい、後の精力的なコンサート活動の根源となったことでも知られております。それよりも私の名前が、「静江しずえ」なのですが、父が「揚子江ようすこう」、現在の「長江」の下流域を指しているのですが、そこから命名してくれたようなのでとても愛着を持っております。


 さだまさしさんは、書籍もよく出されておりましたが、テレビと出版社の企画で書き下ろした『精霊流しょうろうながし』(2001年9月1日・幻冬舎)を私は東京大学附属病院で入院中に夫の市松いちまつ緑青ろくしょうの差し入れで読む機会がありました。本作を同名の映画、『精霊流し』(2003年12月13日公開)として上映され、原作、主題歌、医師役として関わりました。主題歌は『精霊流し』(1974年4月25日発売・グレープ)です。これが新しい時代の映画との距離の取り方だと感じました。


 その後、『解夏げげ』(2002年12月5日・幻冬舎)を書き上げると、同名の映画『解夏』(2014年1月17日公開)と、原作、主題歌『たいせつなひと』で関わりました。その際、新たな境地に至り、音楽担当を自分が必ずする必要もないとも考えたようです。


 『眉山びざん』(2004年12月24日・幻冬舎)を上梓し、同名の映画『眉山』(2017年5月12日公開)では原作を担当しましたが主題歌はさだまさしさんではありません。しかし、舞台『眉山』(2007年12月)と舞台『眉山』(2009年8月)では、さだまさしさんの歌『眉山』(2007年9月12日発売)が主題歌として用いられています。

 また、『アントキノイノチ』(2009年5月19日・幻冬舎)を発売したものの同名の映画『アントキノイノチ』(2011年11月19日公開)でも原作は担当するけれども、音楽の担当は自分にとは思わなかったそうです。


 しかし、『かぜつライオン』(2013年7月16日・幻冬舎)を書き上げたのには鏡の世界からのオファーででした。先に歌ありきだったのです。アルバムに収録されて初めて世に出た『風に立つライオン』(1987年7月25日発売)は、俳優をされている大沢たかおさんが是非映像化したいと訴えており、映画『風に立つライオン』(2015年3月14日公開)に至りました。ここは、主題歌をこの歌以外が支える訳にはいかないでしょう。沢山の予防接種をして、さだまさしさんも初めて舞台となる地へ足を運んだそうです。


 映画を愛するさだまさしさんと私です。さだまさしさんはニュースを見に銀幕に通ったようで、また憧れの世界もそこにあったのでしょう。


 ◆


 さて、次からは映画の作品ごとに書かせていただきます。


 うさぎも大好きさだまさし!

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