神は人と同じく二本の手を持つ
- ★★★ Excellent!!!
宗教をテーマにした作品ですが、書き手の引き出しの多さ、人間を描き出す視点の鋭さには恐れ入ります。
神が実在する世界で、人間として生きることの困難さ、人間の度し難さをこれでもかと描き出した作品です。
それでいて作品が痛快さを損なわず、ある種の心地よさを覚えるのは主人公の果断な性質あればこそ。
しかし彼もまた人であり、決して迷わないが常に悩み苦しむ、それが素晴らしい。
彼が語る示唆に富んだ言葉の数々も説法としての説得力に満ちており、思わず唸らされます。
本作で神とされるアスクラピアはギリシャ神話におけるアスクレピオスにネメシスを足したような存在で、これもまた人間の二面性を反映しているかのよう。
主人公を取り巻くキャラクターも愛憎、禍福、恩讐の中でもがき苦しむ者たちです。
登場する者たちにこの作者様がどのような未来と結末を与えるのか、まだ未完ですがこの先も非常に楽しみにしています。