最終話 オチはトリのように飛んでいきました

 結局、なんも思いつかない状態で時間が過ぎていくので、あたしらはひとまず昼飯を作ることになった。

 と言っても、イレギュラーなことが起きて、料理する気概がしぼんだ。昼はレトルトカレーにする。晩に本気を出す。


「で、どうする? いっこうにいいもの見つかりそうにないんだけど」


 あたしが聞くと、うーん、とトリさんが首をかしげる。


「なんかもう、別にこのままでもいい気がしてきたトリ」

「おい」


 トリさんの言葉に、タケルの口調が強めになる。


「よく考えたら、別にトリで悪い理由がないトリ。トリもまあまあいいトリ」


 一度却下して受け入れる編集者みたいなこと言ってるな、このトリ。

 うーん、でも、何かしらオチがないとパッとしない。あたしはこれでも児童ホラー作家の娘だ。

 色々考えて、ふとひらめく。


「要するにキャラ付けが欲しいんでしょ? なら語尾じゃなくてもいいんじゃない?」


 あたしがそう言うと、トリさんとタケルが首をかしげる。


「例えば、お嬢様になるー、とか、魔法少女になるー、とか、そういう憧れ? みたいなものを持つだけで、違うって言うか」


 やっぱり、大事なのはコンセプトだ。

 漠然としたイメージでも、強い憧れがあれば、自然とそちらへ向かっていく。

 あたしがそう言うと、ふるふるとトリさんは震えて、


「その通りトリ!」


 と、叫んだ。


「そうだトリ……ボクは小手先のキャラ付けだけ考えて、肝心の『こうありたい』って気持ちを忘れていたトリ……!

 こうしちゃいられないトリ!」


 トリさんはそう言って、バッサバッサと翼を鳴らした。


「ありがとう、サチ! そしてタケル!

 ボクは、大事なことを思い出したトリ!

 これから修行して、ボクの思う、トリによるトリのためのトリになるトリ……!」


 そう言って、きらきらきら~! と輝きながら、トリは消えていった。

 呆然とするタケルに、あたしは言った。


「トリあえず、オチはトリでついたかな」

「え、こんなんでいいの?」


【完】




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【KAC20246】うちに来たトリには、どうやら相談があるようです。 肥前ロンズ @misora2222

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