第27話 性格を直せば、ウハウハなのか?

 陽日はるひの計らいにより、寿命が一年縮むという最悪の事態を免れた陽向ひなた。先ずはひと安心とばかりに胸を撫でおろす。しかし、条件付きという言葉から分かる通り、無理難題を要求される可能性だってある。よって、話の内容を聞くまでは、無事解決とまではいかないだろう。


 ゆえに、不安が隠せない陽向ひなたは、恐る恐る陽日はるひに交換条件について問いかける……。



「さっき言ってた条件って、もしかしたら…………」

「ちゅぅ、そんなに身構えなくても大丈夫。やってもらうのは、父さんにでも出来ることです」


「俺にでも出来ること?」

「ちゅぅ。それはですね、先ほどの非礼。彼女に対する暴言を素直に謝って欲しいのです」


 たしかに、謝罪一言で許して貰えるのであれば、苦も無く簡単なことであろう。けれど、そんな些細なことで寿命が縮むなど、到底考えられるはずもない。これにより、さすがの陽向ひなたも怪しいと感じたのか、陽日はるひの様子を注意深く窺っていた。


「彼女って、日葵ひまりのことだよな?」

「ちゅぅ、そうです」


「そうですって、 なんで俺が日葵ひまりに謝らなきゃいけないんだ?」

「ちゅぅ、余計な詮索はしないといいましたよね」


 納得がいかないとばかりに、陽向ひなたは疑問を投げかけてみる。この返答に対して、ピシャリと言い放ち口を紡ぐ陽日はるひ


「余計な詮索だと? 待て待て! そもそも俺と日葵ひまりの問題に、なんでお前が介入する必要があるんだ」

(ちゅぅ……イチイチ面倒くさい人ですねえ。未来では、こんな性格じゃなかったはずですが…………。 ひょっとして、父さんの身に何かあったのか?)


「――で、どうなんだ!」

「ちゅぅ、はいはい。これから説明するので、焦らないでください。つまりですね、先ほども言ったように、父さんは少なからず性格に問題があります。なので、まずは小さな事からコツコツと始めなければなりません」


 陽日はるひは暴言を謝罪するよう促すも、これに納得がいかないのだろう。陽向ひなたはいつも通りに反論して言い返す。


「性格? 俺のどこに問題があるというんだ。いたって普通だと思うが?」

(ちゅぅ……ここまできたら、問題というよりも重度の病気ですねえ……)


「んっ?」

「ちゅぅ。とにかく、このままだと未来の父さんは独身貴族。誰にも相手にされないまま、孤独死することになります。そうならない為に、僕がキューピッドとして遣わされたんじゃありませんか」


 陽向ひなたの態度に溜息が零れるも、気を取り直して話を続ける陽日はるひ。この言葉に納得がいったのか、頷きながら呟いてみせる。


「孤独死かぁ……それは、ちょっと寂しい気もするな」

「ちゅぅ。ですから、少しずつでも良い方向にしていくために、目の前の事から改善していきましょう。そうすれば、未来はモテモテの人生。もしかしたら、父さんが想う意中の人からアプローチを受けるかも知れませんよ」


「俺が想う意中の人…………?」

「ちゅぅ、そうです。あとは僕がしっかりとサポートします。なので、先ずは彼女に謝ってみることから始めてみませんか?」


 陽日はるひは諭すように語りかけ、反省を促すよう誘導する。この説明に少し考える素振りを見せた陽向ひなたは、意を決したのか重い口を開いた……。


「そっ、それもそうだな。お前がサポートしてくれるなら、少しぐらい頑張ってみるか」

「ちゅぅ、その意気込みです」


「っていっても……日葵ひまりは怒って先に帰ったから、もういないかも知れないぞ」

「ちゅぅ、そのことだったら大丈夫ですよ」


 陽向ひなたが不安を口にするも、陽日はるひは余裕の表情を浮かべ自信満々に答えた。


「大丈夫?」

「ちゅぅ、母さ――じゃなくて、彼女はそんな人ではありません。とても心優しい、思いやりのある人。父さんのことを気遣って、必ず待ってくれているはずです」


日葵ひまりが俺を? 一方的に出ていったんだぞ、そんなわけないだろう」

「ちゅぅ。そう思うのでしたら、ご自身の目で外を眺めて見てください」


 陽向ひなたは半信半疑のまま、屋上から外を見渡した。するとそこには、校門の前で誰かが立っているのが確認できた……。


「あれは……日葵ひまり?」

「ちゅぅ。どうやらその顔は、見つけることが出来たみたいですね」


「まさか、待ってくれていたのか……」

「ちゅぅ、そうですよ。ですから、あまり待たせても悪いので、早く行きませんか」


 予想外の出来事に動揺し、思わず息を呑む陽向ひなた。そんな様子に気が付いたのか、陽日はるひは優しく微笑みながら声をかけるのであった…………。

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🌷わたしが導く幸せな結婚~生と死の境界の中で……🌷 みゆき @--miyuki--

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