KAC20243 呪いの誤配送

久遠 れんり

呪いの宅配

 ある日仕事から帰ると、玄関前に宅配の荷物が置いてあった。


 だが差出人が、加古乃女さん?


 怪しい。

 過去の女性で浮かぶのは幾人かいるが今更?

 何か忘れ物でもあって、律儀に送ってきた?


 とりあえず開けてみる。


 うん箱の中はまた黒い箱。

 周囲には、梱包用の紙が丸められて入っている。

「きっちりしているな」

 開けようかと思ったが、とりあえず風呂に入り、ビールを飲みながらコンビニ弁当を食べる。


 体も落ち着いて、少しほろ酔いで開けてみる。


 意外と簡単に開く。

 中には、あー駄目な奴だ。

「髪の毛と、何だろうな土っぽい何か」

 そう思ったら、いきなり部屋の電気が落ち。

 一気に数度室温が下がる。


 息苦しさと、妙に重い空気。


 ふと見ると、テーブルの上に女が立ち、こちらを見下ろしている。

「行儀が悪い。おりなさい」

 ついそう怒鳴る。

 夜中の二時。近所迷惑だ。


 そう思い、ドアから顔を出し、廊下を見回す。

 大丈夫そうだ。

 そっとドアを閉める。


 振り返ると、テーブルからは降りたらしくそこにいた。

「人の後ろに立つんじゃない。危ないだろう」

 そう言ったが、無視をして言い始める。


「ねえ。探したのよ。私のこと覚えているでしょう? 忘れるわけないわよね」

 そういう彼女の目は落ちそうなほど見開かれ、口はガパッと開く。


「うーん。だれ? 記憶にないな」

「えっ?」

「覚えがない」

「えっ?」

「恨みって、名前は? 相手の」

人出 成男ひとで なしお

「送付先にかいてあったけれど、僕の名前は入出 成男いりで なるお

「えええっ。そう言えば顔も身長も違う。あの人の方がかっこよかった」

「失礼な奴だな。大体個人で恨みを晴らすのは、私的な制裁だから方法により罰せられるよ。警察に行きなさい」

 そう言うと困った感じになる彼女。


「もう何年も前に殺されて、埋められたんです」

「僕は法医学の教官だ。場所はわかる?」

 彼女は首を振る。


「車にでも乗せられたのか?」

 こっくりと頷く。


「時間はどのくらい?」

 ぷるぷると首を振る。


「うーん困ったね。拉致された場所はわかるね」

 こっくりと頷く。


 だが詳しく話を聞くと、条件に合いそうなのは河川敷だとわかった。


「良し、条件に合うところへ行って見るから、近くに行ったら教えてくれ」

 そう言うと、彼女の顔は多分生前の顔なのだろう。


 かわいい顔に戻った。


 そして、妙に光りながら消えていった。

「あっおい」

 部屋の電気が点いて、妙な頭痛がする。

 見れば、配送の箱まで綺麗に消えていた。


 危惧したとおり、彼女は成仏したようだ。


 彼女が教えてくれないため、意地で場所を当て警官に驚かれる。

 犯人はわかっている。

 別れ話のもつれから、仲間で回し殺した様だ。


 問題は亡くなってから何年か。

 そこが問題だ。

 証拠が消える。


「絶対に見つける」

 最後に浮かべた、彼女の笑顔が目に焼き付いている。

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KAC20243 呪いの誤配送 久遠 れんり @recmiya

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