静謐な美しさと悲しさ、そしてその奥に恐怖すら感じる連作短編

第一話から読んで欲しい連作短編です。

第一話ではかなり身勝手な印象の主人公、
第二話では高校時代の姿が描かれます。

この2作では明らかに、主人公(健太)は同じ人間です。
たくさん考えて理知的なのに、結局は不器用な生き方しかできない、どこか陰のある青年。

それが第三話でがらりと印象が変わります。
あのめんどくさい文学青年っぷりはどこへ行ってしまったのか、
子供のように素直な彼の姿に、読者は目を疑うでしょう。

彼が変わったのは、ある病のせい。
記憶があいまいになり、かつての人格が失われたように見える。

それでも彼の心に残っているものはある。
それは、愛。
友情とか恋愛とか区別する必要のない「大切な人」。
子供に返ってしまったかのように見える彼だからこそ、今は素直に「大好き」と言える。

読者の心に爪痕を残すこと間違いなし。
気合を入れて読め!!!

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