KAC2024のお題で、あえての短編連作、三部作の三作目(完結編)。
連作で別作品となっているからこそ、それぞれが印象深く、より強く胸に残る、美しい構成。
この完結編では、それまでの主人公の印象がガラリと変わるほど、衝撃を与えられます。
けれど、その〝純〟とさえ言えるような主人公の心理描写が、巧みな文章表現力によって、率直すぎるほど胸に沁み込んできました。
完結編に相応しい、全てを取り払ったかのような、主人公の澄んだ感情。
透明な花のように。
切なさもあり、哀しみもあり……。
けれど透き通るほど美しく、のんびりと流れる雲のような優しい希望がある。
どうか、同作者様の、
一作目『透明な花と終わりに』
二作目『透明な花と海』
そしてこの三作目『透明な花とそれから』
合わせてお読み頂きたいと、本気で願ってやまないほどです。
第一話から読んで欲しい連作短編です。
第一話ではかなり身勝手な印象の主人公、
第二話では高校時代の姿が描かれます。
この2作では明らかに、主人公(健太)は同じ人間です。
たくさん考えて理知的なのに、結局は不器用な生き方しかできない、どこか陰のある青年。
それが第三話でがらりと印象が変わります。
あのめんどくさい文学青年っぷりはどこへ行ってしまったのか、
子供のように素直な彼の姿に、読者は目を疑うでしょう。
彼が変わったのは、ある病のせい。
記憶があいまいになり、かつての人格が失われたように見える。
それでも彼の心に残っているものはある。
それは、愛。
友情とか恋愛とか区別する必要のない「大切な人」。
子供に返ってしまったかのように見える彼だからこそ、今は素直に「大好き」と言える。
読者の心に爪痕を残すこと間違いなし。
気合を入れて読め!!!