アナザーストーリー

はじめまして

これもできないかな。」

「✕✕って走るのが速いじゃん。」

!!」


担任の顔も、名前も、思い出せない。

そこだけが黒塗りになったみたいだ。


いや、違うな。

周りの奴らも、言葉も、全部真っ黒だ。


思い出せない。


社会も学校も人間関係も

捨ててしまいたかった。



*****



学校は嫌いだ。

自分の能力を測られるのが怖い。


「前を向け」、「もっと頑張れ」「あの子をお手本に――」?


あぁ。うるさい。


僕は僕だ。


人と比べられて、また凹んで、精神が削れていく。


引きこもった。赤色を見ると心が落ち着いた。


そのまま逃げた。


……全てから。



遠のいていく意識の中、顔の周りがどんどん赤色に染まっていく。

ドアの隙間から漏れ出す光が僕には少し眩しすぎた。



*****


気づいたら大きな川の前にいた。

そこには昔ながらの木の舟に乗ったヒトがいる。

するとそのヒトはこちらを向いて、


『君は、なぜここに?』


「えっと……。思い出せないな」


『無理に思い出さなくていいよ、』


「あの。ここは川、ですか?」


『ああ、河だね。でもあまり河ではないよ』


綺麗な川では無いってことなのだろうか。


「なら対岸には何g――?」


『君はあちらへは行けない。』


「え?」


『君はまだあちらへは行けないんだよ。そういう決まりだからね。

 君はまだ、何か人にしてもらいたいこととか願い事(?)とかがあるんじゃないのか?』


いや、ありますよ?(――認められたい)

 彼女欲しいし、友達もっと欲しいし、親に褒められたいし。

 でも、向こう側に行ってもできる気がするんですよね」


『できないな。ここにいてもできない。』


「なら、どうすればいいんですか?生きていれば確実に叶いそうな単純な願いですよ?

 まさか本当に死んでるって訳でも無いんですから w」


『……そうだな。叶いそうな願いだ。だったら、目を覚ますといい。

 そうすれば君の願いは叶えられるかもしれない』


「そこは『叶うさ』って言い切ってください!!あ、でもすみません、色々聞いて。

 またどこかで会えたらお話しましょうね」


*****


そこから起きたら学校。


ず〜っと学校。


周りは知らない人だらけだし、変わらずみんなは無視してくるし、

多分まだイジメられているんだ。



早くいなくなりたい。今すぐにこの場所から。なんて思っていた。


「こんにちは、はじめまして。ひとりなの?」


「え?僕に言ってる?」


「うん w 他に誰かいる?w」


「あ、確かに。はじめまして」


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さよならを覆す最高の方法 ゆ〜 @WGS所属 @MainitiNichiyo-bi

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