さよならを覆す最高の方法
ゆ〜 (。-ω-)zzz...お休み中
さよなら
早くいなくなりたい。今すぐにこの場所から。なんて思っていた。
「こんにちは、はじめまして。ひとりなの?」
「え?僕に言ってる?」
教室の後ろでたった一人縮こまっていた僕に話しかけてくれた君。
本当に感謝しているよ。心からありがとうを言いたい。
でも、僕にはそんなことを言える権利はない。
何度も声をかけた。でも、無視された。
多分イジメられてるから。
声をかけても無視されるなんて当たり前だし、先生もそれにのったのか体育祭だって僕の走順なんてなかった。今どきの先生はおかしい。
彼女が足を引っ掛けそうになった机を動かす。
テスト用紙が飛びそうになったら、窓を閉めてあげる。
それだけじゃないけど、彼女は無視をする。
でも、彼女の対応は正しい。
僕だって、彼女が僕と親しくしたからって理由で君を巻き込むことなんてできない。
君はやっと会えた僕の救い主なのだから。君が笑っていられるなら、僕は大丈夫。
********************
「みんな、ごめんね。私、転校するの。」
雪の舞う寒い日だった。窓から見える雪に高校生にもなってはしゃいでいた。
帰りの
雪によってもたらされていた歓喜のざわめきが一瞬で
驚きと悲しみに変わる。
彼女は俗に言う一軍女子で、人気者だった。
このことは、僕がこれまでここにいた中で一番記憶に残っている。
次の日、カラオケでお別れ会をしたらしい。
クラスの僕を抜いた全員に声をかけていたけど、来年から受験生ってのもあって半分くらいが断っていた。僕はとても行きたかった。でも、みんながカラオケに行っても僕はそこから動けなかった。
カラオケの翌日から、クラスはある噂で持ち切りだった。
誰かが言う。
「〇〇って幽霊が見えるんだって。」
「転校する理由それらしいよ?」
「単にこのクラスが嫌だからとかじゃないよね?
「そうだったら性格悪すぎ。」
「うちのクラスに幽霊なんているのかなぁ…」
どうやらこのクラスには幽霊がいるらしい。
「〇〇さん憑き纏われてるんだって。」
ああ、僕も幽霊が見えたらな。そんなやつすぐに追い払ってやるのに。
「え、呪われてるのかな。近づいたらあたしも呪われる!?」
********************
彼女が学校に来る最終日。
彼女は掃除が終わったあともクラスにいた。
みんなが思い思いの放課後を過ごしに教室を出ていったときだった。
彼女がこちらに歩いてきた。初めてあったときのように。
窓の外では野球部の掛け声がする。それくらい静かだった。
「ごめんね。」
誰に向けての言葉か分からなかった。
「自分から話しかけておいてずっと無視しちゃっててごめんね。」
僕に向けていっていることだとようやく理解できた。
君が悪いんじゃない。
そうやって反応したくても話し方が分からない。
「身勝手に君を理由にして転校しようとした。
ほんとは親がさ、」
僕を、理由にした…?
理由にしてたのは幽霊じゃないの…?
「最後にありがとうって言いたくて。
君はこのクラスから出られないから、私の話聞こえてるよね。
本当にありがとう。私のこと見守ってくれていて。」
どうしようもできなくて、僕は悲しかった。
僕は幽霊だった。そして、彼女は見えていた。
僕のできる精一杯のことをしたら、意識が遠のいていった。
********************
「ねー、だれか黒板に『ありがとう』って書いた?」
「しらねー」
「あたしも知らないよ?」
「おっけー
なら、〇〇さんかな、昨日最後まで残ってたっぽいし」
「でも筆跡ちがくなーい?もっときれいな字だもん
その字はどっちかって言うと『男の字』って感じする!」
「あー、たしかにぃ」
「ま、消しちゃうわ!」
「結局消すんだw」
「だって消さないとおこられるもーん」
********************
いまクラスはどうなっているのか分からない。
少なくとも僕は今、彼女の守護霊として彼女をいつも見守っている。
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