KAC20241 俺はその時、危険を顧みず彼女を救った。

久遠 れんり

任務遂行。彼女の命は俺に掛かっている。

 俺には三分以内にやらなければならないことがあった。

 それは分かっている。


 その日俺達は、緊急の依頼を受けて、爆発物処理の現場へ向かった。

 現場は、展望レストランのあるビル。

 

 展望フロアの周辺をぐるりと窓際にならんだ柱は、時報のように破壊されてきて、今現状この建物はエレベーターシャフトと非常階段の構造で上階を支えている。


 他にも爆発物はエレベーターの最上部に一つ。最下部に一つ。

 そして、この展望フロア。

 十階というキリの良いところに造られたフロアは、全二十階の建物を壊すには都合が良いところにある。


 周囲の柱を壊し、真ん中のエレベーターシャフトと、北側にある非常階段。今この階で、二つの装置が動いている。


 この展望レストランは営業中だったらしく、エレベーターが使えず、非常階段も破壊されて、瓦礫を乗り越えていける元気な人しか避難ができていない。

 つまり細い柱を襲った爆発に巻き込まれ、幾人かが倒れている現場。


 俺達はヘッドカムで連絡を取りながら現場へ到着。あらかじめ指示のあった場所。

 ぐるりと確認して、対象が一つだけと判断する。


 複数の爆発物。

 いつもはチームで対応するが、今回は一人が一つ。解除を一人で行う危険な状況。

 本体ケースには、やばそうなトラップはないようだ。一応確認をする。


 密閉された蓋を、外していく。

 普通、反時計で緩めるが、物によって逆ネジの場合とか、蓋がそもそもスイッチで外した途端にドカンとか良くある話だ。

 注意深くクリップして、ケースと蓋は通電させる。


「ふう。ケースにトラップはない」

「了解。こちらも大丈夫だ。確認をした」

 ユニットを解体していく。

 いくつかのダミー。


 緊迫をした現場。

 だが、俺にとってのトラップが、左脇にある。

 若くグラマラスな女性。

 少し寄せたときにシャツがめくれ、その胸が視界に入る。


 ケース内部のタイマーを見た。

「残り百八十秒。撤退だ」

 規定通りの冷酷な命令。


 俺は見捨てられず、彼女を担いで走った。

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KAC20241 俺はその時、危険を顧みず彼女を救った。 久遠 れんり @recmiya

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