怪異か、人間か!?ホラーもミステリーも存分に味わえる口演感じるエンタメ

どこかコミカルな印象を受ける語り口に気を許していたら、序盤の「ぞろり」で一気にゾッときました。
ほぼ全話が4,000文字未満で、適度な改行もあり、さらには毎回引きが強い! そういったWebで読む配慮だけでなく、登場する人物たちも癖があって(アニメ絵も似合いそう)、エンタメ性に富んでいると感じました。
怖さや引っくり返るような展開が短スパンで来るため、物語は驚きと共に、転がるようにして常に前に進んでいきます。
一方で、語彙は普段見かけない難しめなものが幾つも用いられており、近代日本文学のような硬い印象を受けました。物語も作り込まれていて、読み応えがありました。
この気楽なエンタメと重厚なエンタメとでも呼ぶようなものの両立が大変魅力的で、とても良い、独特の雰囲気を味わうことができました。

不気味に感じたり、説明できなかったり、悍しく思えたりといった数々のエピソードは、まさにホラー!
一方で、探偵、推理と、まさにミステリー!といった展開も盛り沢山です。
非科学と科学(論理)という、同時には存在し得ないと感じる二つを両立させているのも、この作品の魅力だと思います。ホラーも、ミステリーも、両方ともを思い切り楽しめちゃいます。
怪異か?人間か?と読んでいて気持ちがぐらり、ぐらりと揺らされるのも楽しかったです。

語ることを生業としている方に物語ってもらっているような感覚で読めました。
この語り口や、数々の両立が生む独特の雰囲気は、実際に読んでみないと味わえないものです。
最初から最後まで驚きの詰まった作品でした!

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