私はこれが好き

その場の空気や塵を感じる、味わい深い文章。かっちり&難しめ語彙な作品。
ウェブ読者には辛いかな、と思う重みがありますが、作者様がその点を理解しているとわかる改行スペースのおかげで、読みやすいです。
重厚で密度が高いのが素晴らしい点なのですが、ウェブだと不利になってしまう。
そこでプラットフォームに合わせて工夫する柔軟性や読み手への思いやりを感じて、好きだなと思いました。

知識量、情報量が心地いい。
知らなかったことが知れる。知っている知識が出てきてにっこりする。そんな知的な楽しさが味わえる。
時代感は古めですが扱っているネタが「あ、去年から今年にかけて話題になってたなぁ」というものもあり、話題に乗っかるエンタメ性みたいなのも感じました。

個性的な登場人物。
マダミスを見ているような気分になる登場人物たち(マダミス好きなもので。すみません)

得体の知れないゾッとする怖さがあり、ドキリとさせられ。一方で地に足がついている感覚が強く、論理的。
事件、謎提示。探偵、アリバイ、謎解きが丁寧に描かれている。閃く瞬間があり、驚きがある。

かつ、人間の情念とか、色気とかもあり。
盛り上がりどころの雰囲気も抜群で、文字が気持ちよく、感情が揺さぶられて、まるで映画を観ているような気分で惹き込まれました。
お前が犯人だ、と言うシーンなんて美しいですよね。痺れますよね。
じっくり積み上げてきて、期待させて、さあどうぞ! ここが落とし所! 
そんなカタルシスを魅せてくれた気がします。

私は推理小説好きを名乗るほど多く摂取していませんが、推理小説を読む方はこんな楽しさの中毒みたいになって、もっとくれ、もっと読みたい! ってなるのではないかなと思います。
そして、こんな楽しさを提供できる作品を作れる人は少なくて、とても貴重なのだの思います。

論文のようであり、映画のようであり、クイズのようでもあり。
ラストで「おっと待ちな!」ってもう1インパクトくれるじゃないですか。びびったわ!

大好きな作品だなと思いました。
大好きです。

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