自主企画に参加していただき、こちらの作品を知りました。
中央アジアを彷彿とさせる文化と人々の暮らしの描写が魅力的ですぐに好きになりました。
神とされる謎の少女とその移動手段である〝神の御脚〟の少年が大昔の因縁と約束を果たす物語。様々な取り違えや誤解を紐解き、苦難に遭ってもそれぞれがそれぞれの使命をまっとうしようと誠実に努力する様子が丹念に描かれます。まさに作中にある織絵巻【タペストリー】が織り上げられていくように登場人物たちは生き生きと行動し、難題に立ち向かいます。
作者様の想像を掻き立てる素敵なイラストもあいまってとても楽しく、ときにはしんみりと読ませていただきました。
※※※以下、ネタバレ※※※
個人的な好みとして、主人公のラケとディヤが安易な恋愛関係風にならなかったのが良かったです(将来はどうなるか分かりませんが)
彼も彼女も自分の使命、役割、責任をきっちりこなす姿に感動しました。
話中、イェンダの人々の死で絶望しましたがなんとかなって本当に良かった😭
チャンカヌ・バダルのひょうきんさに救われつつ、ついに積年の運命を断ち切りイェンダはこれからも続いていくでしょう。
蛇神との戦いの描写、マヤ様が託した神の役割からディヤを解放する流れもとても素晴らしかったです。
直接ラケの英雄譚にならずとも、出来事はタペストリーに織られ語り継がれていく。ロマンがあります。
余談ですが、元ち.とせさんの『語り継ぐこと』という曲がありまして、この物語にぴったりだなあと聞きながら今これを書いています。昔の某アニメのタイアップですが、素敵なので聞いてみてくださいね✨
読了がたいへんに遅くなり申し訳ありません。
今一度、企画に参加してくださり本当にありがとうございました( ´ ` *)
現人神の少女とその御脚である少年の物語。
災いの蛇神を祀る山岳の集落イェンダ。そこには現人神がいる。
彼女は話すことも地に足をつけることもない。
現人神の移動を行うのは神の御脚である少年の役目だった。
祭りの日、蛇の群れに襲われた集落から、現人神を守るため山を駆ける少年。
そこで少年は蛇神と出会う。蛇神とは、現人神とは何者であるのか。
厳しい土地の文化や民俗、息づく精神が生々しい熱を持って語られます。
邪は消えないが善いものもまたあり、災いは人々の力で乗り越えていける。
神は見守り生きる力は受け継がれていくという力強いエネルギーがありました。
さて、タイトルの恩寵が何かと最後にわかりますが、
それはそれを生んだ地理や歴史、文化、人々全てのことなんだろうなあと。
章タイトルの「天険のまほろば」が良く似合う美しい物語です。
ヒロインの少女(現人神)は地面に足を付けることも喋ることもができない。マジで⁉ そんなのムリ……と思わせる設定が秀逸です。「脚」となる主人公は常に少女を抱えていなければならない。その困難さが、物語を盛り上げるわけですね。素晴らしいアイデアだと思います。自分には思いつけない……。
「篤き恩寵のイェンダ」というタイトルも、その意味が回収されるラストも見事です。
一番好きなシーンは、祭りの日にラケとスニルが踊る場面です。神秘的ないでたちと躍動感。その場で見てきたような臨場感。たぶん本当に見てきたのでしょう、第三の眼で。
山岳集落イェンダ。蛇神の災いと共存してきたそこでは、少女が現人神として祀られていた。祭りの日、集落は蛇の群れに襲われる。《神の御脚》である主人公ラケは現人神を抱え、その足代わりとなって駆ける。
どことなく児童文学の雰囲気を感じるこちらの作品には、その土地に根付く文化や精神が、とても生き生きと描かれています。どういった経緯で人がそこに住み、その暮らしの中でどんな生業や風習、民族性が育まれていったのか。それらには自然な必然性のあったことがひしひしと感じられ、人々の逞しさ、生きることの尊さといったものが伝わってきました。
ストーリー、作中で語られるイェンダの精神、そしてどこか人間臭さを感じる神々からは大事なことを教わったように思います。鮮やかな伏線回収も相まって、作品の持つメッセージが真っ直ぐに心に差し込んできました。
ハラハラドキドキ、感動もできて、苦も楽も光で包まれる。読めばきっと誰もが力をもらえる作品です。
近況ノートで公開されているイラストも素晴らしいです!
すごい作品です。これぞ青少年が読むべき一般文芸のファンタジー。なぜ図書館に置かれていないの?
他の作家様のお名前を出すことはマナー違反かもしれません。しかしあえて出させていただきます。(駄目だったら編集します)
上橋菜穂子先生作品がお好きな方、ぜひ、ぜひ読んでください。物語から溢れ出す生命の香りに鳥肌が立ちますよ。
本作の主人公ラケが生きるのは「イェンダ」という集落ですが、その描写が素晴らしい。
人々の息遣い、食べ物の匂いや味、生活音。作者様がイェンダ集落を心から愛していて、それが読者にもまっすぐ伝わってきて、我々読者は一話目からイェンダの人々のことが愛おしくてたまらなくなります。
しかし無情にも物語は人々を呑み込んでいく――
主人公の武器は足です。
蹴り技という意味ではありません。少女を抱えたまま険しい山道をひたすらに走る、その腕力と脚力、否、胆力と精神力たるや。
追い縋る闇に負けず、強く生きよ。
今、苦難に下を向いておられる方は、そのままの体勢で結構ですので、この物語の最初の1ページを開いてみませんか?
きっと読み終わった頃にはすっきりとして、気付けば前を向いていることでしょう。