第8話 初めてのクエスト
「はぁ……やっぱり2人でもDランク2人じゃ大したクエストないわね」
「まぁ、でもいいじゃん。『森に発生したモンスターを討伐しろ』って、ちゃんとクエストっぽいし」
「みたでしょ!? 写真はちっこい犬みたいなモンスターだったじゃない」
そんなこんなで俺とアイラはモンスター討伐の為に近くの森まで来ていた。
この森は以前レカに教えてもらった人の住まない魔界と言われる場所だ。
まぁ、魔界と言ってもここはまだヒース王国の近く。ランクの高いモンスターはなかなか出てこないから安心だ。
とりあえず、パーティーを組んでいればメンバーのいずれかのランクのひとつ上のものまで受ける事が出来る。今の俺とアイラは2人ともDランクの為、行けるのはCランクのクエストまでってことだな。
「でも本当に気を付けろよ? 俺は何も出来ないし、ここら辺でも高ランクのモンスターがたまに出るって言ってたし」
「私なら大丈夫よ! ……はい、一応これ持っときなさい。いつも私は2本使ってるけど1本貸してあげる」
そう言ってアイラはほいっ、と短剣を投げて渡してきた。慌ててキャッチする俺。
投げ渡された短剣は想像よりも重たく、魔力を纏っていた。これは所謂、魔剣と言われるやつなのだろう。
黒く光る魔剣を渡された俺は、赤く光る魔剣を持ったアイラについて行き、犬型のモンスターが発生したと言われた場所までたどり着いた。
「……お、あれじゃないのか?」
「ほんとだ、あれだわ! ……まぁ、初めてのクエスト……絶対私のこと認めさせてやるんだから!」
「別に認めてないわけじゃ……!?」
そう言ったアイラに返事をしていると、一瞬にして彼女は消えた。いや、ものすごいスピードで走り出した。
ブォン、と風を斬る音と共に数メートル先にうじゃうじゃいた犬型のモンスターをスパスパと切りつけていく。
「す……すっげぇ……!!」
素直に思った。かっこいいと。
「まだまだ! もっとスピードあげるわよ!」
ますますスピードに乗るアイラ。恐らくモンスターは4、50匹程いただろう。しかし、ものの数十秒で全て片付けてしまった。
「と、まぁ……こんな感じだわ! どう? どうだった!?」
狩りを終え、短剣に付いた血をはらいながらてこてこと走りコチラに近づいて来るアイラ。
「思った以上だったよ。すっげぇかっこよかった」
「でしょでしょ! じゃあ……ね!? なろ!?」
俺の心はかなり揺らいでいた。もうパーティーを組んでしまってもいいんじゃないか? そこまでして組まない理由はあるのか?
しかも、アイラのこの実力なら気楽に過ごせるのでは?
「うーん……じゃあ……!?」
「なにこれ!?」
返事をしようとした瞬間だった。異世界初心者の俺でも分かるほどの魔力量が森の奥からヒシヒシと伝わってくる。
身体中に緊張が走る。
「と、とりあえずギルドに戻ろう」
「……いや。いくわ。私……戦いたい!」
「ちょおい! そっちはBランクの区域だぞ!」
俺の叫びも虚しく、アイラは走って行ってしまった。でもまぁ……アイラなら大丈夫か。
俺もアイラを追いかけて走り出した。
☆☆☆
「あれ……ここら辺だと思ったんだけど……」
「気のせいだったみたいだな。まぁ、もう戻ろう。話は後でだ」
「まぁ……そうね。戻りましょ……」
森を抜け、魔力の感じた方へと向かったのだが、そこには何もおらず、ただただ新たな森が続いていただけだった。
そして、来た道を戻ろうとしたその時だった。
ギュン!!!
「きゃ! なに!?」
「なんか飛んできたぞ!!」
俺とアイラの近くに生えていた大木に何かが飛んで突き刺さる。
俺は突き刺さったそれを見た瞬間、背筋が凍った。そして、急に吐き気に襲われる。
「おぉえぇ……」
「な、なによ……これ……」
俺たちの目の前に現れたのは、紛れもなく人の死体であった。その姿は無惨にもえぐられ、血だらけであった。
それに気が付いた瞬間、一気にさっきの魔力が再度現れた。
ガルル……
「お、おい……あれ……あれは……やばい……!! 逃げなきゃ……」
さっきの犬型のモンスターだ。でも、大きさも魔力量も段違いのそのモンスターを前に、俺は腰が抜けてしまった。
「ソラ! 早く逃げるわよ! あれはBランクとかそんなもんじゃない!! ねぇ!! 早く立ってってば!!」
アイラに急かされる俺。声も力もはいらない俺。まだ俺は異世界の異の字も知らなかったみたいだ。
グルル……
ゆっくりと近付いてくるそのモンスターの口周りには大量の血が付いていた。
「……あ、あぁ……」
「ソラ! 武器返しなさい! ソラが立てるまで……時間稼ぐから!! ほら!! あぁもう!!」
弱く握っていた黒い魔剣をアイラは俺から奪い取り、戦闘態勢に入った。
「あ、アイラ……だ、ダメだ……」
「そんなん言うなら早く立ちなさいよ!」
そう言ってアイラは走り出してしまった。さっきよりも早いスピードでモンスターに斬りかかる。しかし、アイラは呆気なくしっぽで吹き飛ばされてしまった。
「……くっ!」
木にぶつかる瞬間、何とか魔力を固め致命傷を避けたアイラ。早く逃げなきゃ……! ……た、立てる!!
「アイラ! に、逃げるぞ……」
その瞬間、アイラの方からモンスターへと目を向ける。既に俺の目の前にはその巨大なモンスターが前足を大きく振りかぶっていた。
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