第4話 子どものじょーだん
「ソラ君がこの国の王になってよっ!!」
「はぁ!?!?」
反射的に声を出してしまった。思ったよりも出てしまった大きな声にびっくりするレカ。
「ちょ、そんなに驚かないでよっ!」
「いやいやだって……今日会ったばっかりの人を普通王になってなんて……」
ソワソワしながら実はどうしようか悩んでいた。もちろん王になるかならないかだ。
やっと始まった異世界生活。こんな事が起きてもおかしくない。うんうん。
まぁ……王ってなるとちょっと荷が重いよなぁ。あんまり頭良くないし、まだこの国の人達からの信頼も獲得できてないし……てか、現国王にもまず挨拶しなきゃな!
よし、とりあえず明日は図書館に行って……
「むぎゅ」
色んな期待に胸を膨らませていると、意識の外から二つの小さな手が俺の両頬をホールドした。
「ソラ君っ、じょーだんだよっ!」
「じょー……だん……? まいける……?」
「変なこと言わないのっ。もう……あははははっ! ソラ君ってやっぱ面白いねっ」
「お、面白いってなんだよ!」
「面白いって言うか……可愛いっ!」
赤面する俺。あぁ……恥ずかしい……14歳相手に冗談キツいってぇ……
「でも、まぁ……」
ホールドしていた両手を離し、レカが廊下に繋がる扉の方へと振り返り、再度話し始める。
「王になりたくないってのはホントっ。もし仮にソラ君が適任ってなってくれたらそれはそれでいいんだけどねっ」
「王ってのは何歳からなれるんだ?」
身支度を済ませ、俺も立ち上がった。
「基本的には20歳からだよっ。だから私だったらあと6年くらい経ったらもう王様に慣れちゃうってこと。わぁ……考えられないよっ」
静かに後ろからレカに近づく。そして頭にポンっ、と手を置いた。そして、撫でながら返事をする。
「じゃあ……あと6年のうちに俺がもっと強くなってもっと国のみんなから愛されて。そしたらレカの代わりに俺が王様になってやるよ!」
軽く冗談混じりにそう伝えると、レカはくるっ、と身体を回転させ、ばっと俺の身体に抱きついてきた。
なんとも言えない感情が俺の中を襲う。レカは14歳レカはまだ子ども……
「あはははっ! ソラ君気楽に過ごしたかったんじゃないの? あと多分……ソラ君じゃ無理だよーっ!」
抱きつきながら上目遣いで俺をバカにするレカ。
そう。彼女はまだ子どもなんだ。そりゃ逃げ出したくもなるだろう。
俺が初めて対等に話してくれた人だった。レカはさっきそう言っていた。おっちゃんとの会話を見ても思った。多分、レカは生まれた時から周りからは目上の人とされて生きてきたんだ。
きっと友達もたくさん居ないだろうし、外の事も景色も知らないことばっかなんだろう。
彼女はこの国の王様の娘であったとしても、今はまだ1人の少女だ。
「……そんなこと言うなら気楽に行かせてもらいますよ……レカ!」
「あはははっ!」
俺は楽しそうに無邪気に笑う彼女をぎゅっ、と抱きしめた。
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