第5話 約束
「あっ! まだ外出ちゃダメ!」
「ん? 城の方まで送るよ」
ここはおっちゃんのいるエントランス。青い
「いやぁ……その気持ちはありがたいんだけどさっ? ……多分一緒にいるとこバレたらソラ君まずいよ……」
「まぁ……確かに……で、でも……!」
この恩をどう返せばいいのか。俺はきっと1ミリもレカに恩を返せていない。なのに、はいはいありがと、で終わる訳にも行かなかった。
「いいんだよっソラ君っ。もしまた私が逃げるのに成功したら……たっくさんお話聞かせてよっ! Dランク冒険者のねっ! ……約束だよっ!」
「ちょ! レカ待てよ! おいっ!!」
軽く俺をバカにしたセリフを吐いたあと、レカはすぐに暖簾をくぐって扉を開け、手を振りながら出ていってしまった。
唖然とする俺。約束と言う言葉。
正直、恩を返したいという気持ちがいっぱいなのは本当だ。でも、1人になるのが怖い、と言うのもまた事実であった。
まぁ……また会えるよね。今、危ない橋渡る意味もない、そう考えよう。
「そこの若いの。レカ様と仲良くされておったけど……」
「ひゃ、ひゃい!」
おっちゃんが後ろから声をかけてくる。いきなりのことに声が裏返ってしまった。お恥ずかしい。
「そんなビビらんでくれ。ワシはお礼を言いたいんじゃよ」
「お礼……?」
「レカ様はずっと前から友達が欲しいって言っておったんじゃ」
「友達……」
俺の予想は大体あっていたらしい。血には抗えない。きっと俺が前住んでいた世界よりももっともっと。
「だからもしこれからもレカ様と会った時は……仲良く話してやってくれ」
「……はい。助けてくれた時からそのつもりです。今さっき……約束しましたし」
「お前さんもレカ様に助けられたのか?」
「はい、そうですけど……その言い方だとおっちゃんさんも?」
「ワシの話なんて面白くもない。また今度じゃな」
「あははは。じゃあ、また来させて頂きます」
「おう。そうしておくれ。あ、次はきっちりお金頂くからな」
「次来るときはAランクにでもなってから来ますね」
俺はおっちゃんさんと軽く談笑してから店を後にした。
おっちゃんさんも良い人だったなぁ。初め降り立ったあの場所は本当に地獄だったんだな、と再確認させてくれたレカとおっちゃんさんに感謝感激雨あられだ。
「……まぁこれからどうしようかな」
とりあえず読み書きはレカのおかげでできるようになった。って事は地図も読める。
イスナ地区の大きな図書館は24時間開いてるって確かレカが言っていた。
よし、図書館にでも行ってみるか。とりあえず地図を探そう。
──10分後──
「おぉ、若いの。もうAランクになってきたんか?」
「ごめんおっちゃんさん。地図が図書館の場所教えてください……」
「わっはははは! かなり早い再会じゃったなぁ。ほら、これがイスナ地区の地図じゃよ。持って行きな」
「あ、ありがとうございますっ!!!」
こうして俺はまず、情報を集めるために図書館へと向かうのであった。
☆☆☆
「
俺は今、図書館で魔法と魔力についての記述を読んでいた。
まず、この世界での魔法はスキルと呼ばれ、大まかに2つの種類に分けられている。
1つ目は
これは基本一人ひとり違うものが生まれつき使うことが出来る。まぁ、例外として後天的に使えるようになることもあるらしいが、ほぼほぼその確率はゼロに等しいらしい。
……って事はもう俺が
そして後者の
レカが死にそうな俺を助けてくれたあれはこの
無限魔力の俺ならあんなことやこんなことも出来ちゃうってわけさ。と、ここで出てきた魔力についても記述があった。
魔力は基本皆持っているが、その量や質には大きな差がある。
量が多ければ多いほど扱いは難しく、逆に少なければ扱いやすい。質に関しても、高ければ高いほど優れた魔法を使うことが出来るがこれまた扱いが難しくなってくるらしい。
そして、この魔力。
「レカも魔力量少ないから大したことできないーとか言ってたな」
と、まぁこんな感じでこの世界特有の事は粗方理解した。恥ずかしながら冒険者についても少し学んでみたが、読めば読むほどDランクの不遇さに泣けてきてしまう。
「
なら俺の無限魔力を駆使して
この世の中にはもう最強が溢れているんだ。恐らくどれだけ努力したって上位互換はごまんといる。
てか、魔力量多いと扱い難しいのかよ……俺初心者だぞ……? 剣と魔法の世界4日目だぞ……?
「もう朝か……」
時間って経つの早いんだな。……あんまり眠くないな。なんでだろう。……まぁいっか。とりえず、僅かな希望を求めてCランク以下の冒険者ギルドにでも行こう。
こうして、図書館を後にした俺はイスナ地区にある冒険者ギルドへと向かった。
☆☆☆
「魔力量は測定不可能なのですが……
「あはは……やっぱそうですよね……」
落胆する俺。
「はー!? 私がDランク!? この
指でコンタクトをつける時のように両目をかっぴらく、色は薄い金で短い髪を持ち合わせた若い女性。
うわぁ……残念。隣のカウンターで測定した人も……ご愁傷様です。
静かに声の聞こえる方を向き、手を合わせて軽くお辞儀をした。
「これじゃソロでクエスト受けられないじゃない!」
「Dランクのソロの方でも受けられるクエストはあります……」
「変な虫取りみたいなクエストばっかでしょ!」
駄々をこねるその女性の対応をするカウンターのお姉さんが大変そうだ。まぁ、仕方ない。Dランクなんて言われたらそりゃそんな気持ちにも……
「Dランクって言われるほど私は弱くない! そこら辺の雑魚と一緒にしないで!」
「おい!」
「……?」
反射的に反応してしまった。Dランクは雑魚、という言葉に。
この反応が、後にパーティーメンバーとなる彼女との出会いである。
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