第7話 私とパーティーを組みなさい!

「どうしてアイラはそんなに俺とパーティーを組みたいんだ?」


 一度アイラをなだめ、再度席に座り話を再開した。


「1人じゃ低いランクのクエストしか受けれないから最低2人は欲しいの」


「ってことは俺は数合わせか?」


「ちょ、ちょっと待ってそれは違うから! ……ソラはなんか優しそう……だし……ね? ほらほら! だから、私とパーティーを組みなさい!」


「でもそれ俺じゃなくて良くないか?」


「ぐぬぬ……ソラじゃなきゃ……ダメなの!! ね? ほらほらほら! ですから、私とパーティーを組みなさい!」


「そっか……じゃあ……」


「え! 私とパーティー組んでくれるの!?」


「却下だ」


「なんだよくそやろーー!! このこの!!」


 ポコポコと乗り出して俺の頭を優しく叩くアイラ。正直、アイラが嫌だって訳では無い。なんだかんだ優しいし、聞く限り力も実力は確かだ。


 でも俺は間違えちゃいけない。目標は気楽にだ。これが俺のモットー。虫取りで生活費稼げるってんなら俺はそれでいい。


「アイラはそんなにまでなってちゃんと冒険者やりたいのか?」


 それを聞くとアイラは静かに席につき、話を始めた。


「私、お父さんとかお母さんみたいに凄い冒険者になりたいの」


「へぇ……そんなに凄いのか?」


「そりゃあもう凄いわよ! お父さんは黒眼、お母さんは赤眼を持ってたんだから!」


 なるほど。アイラの双魔眼は親譲りって訳か。


「じゃあ、両親とパーティー組めばいいんじゃないか?」


「それは出来ないわ」


 急に暗くなるアイラ。すぐに察しが付いた。


「……まぁ、俺は残念だが力になれないな」


「なんでよーーー!!」


「俺にメリットが無い。それに尽きる」


「メリットなら沢山あるじゃない!」


「例えば?」


「このアイラさんと毎日居られるわ!」


「この話は無しって事でいいか?」


「ちょ、待って待って、待ちなさいよ! ごめんって!」


「はい、待つよ」


「……ソラはまだなーんにもできないんでしょ? 私とパーティー組んでくれたら魔力の扱い方とか剣の振り方とか戦い方を教えてあげられるわ! 魔法スキル系は無理だけど……」


「確かにそれは魅力的だな……」


 さっきアイラが見せてくれた手に魔力を纏わせるあれ。あれにはかなり期待を持つことが出来た。俺でも生きていけると。まぁ、剣の振り方は正直今は要らないけど……


「やっぱり俺はそこまで強くなる必要は無い。だから申し訳ないけど……友達ってことで終わりだ」


「えーー!!」


 確かに魅力的だ。だかしかし、今の俺には力は要らない。少なくとも今は。だから急ぐ必要は無いって事だ。力が必要無く気楽に生きていけるのであればそれはそれで万々歳。必要ならばちょっと図々しいかもしれないが、その時頼めばいい話だ。


 さすがに毎日モンスターと戦うってのは……酷な事だ。今まで戦うなんてことしてこなかった人間だからな。


「アイラのことが嫌いってわけじゃないんだ。そこだけは分かってくれ。ごめん」


「じゃあ……」


「ん?」


「じゃあ! 今から一回だけ一緒にクエスト行くのよ! パーティーじゃなくても数回なら行けるから!」


「ちょ、おいおい、なんでだよ……」


「私の戦いを見せるのよ! そうすればきっと仲間になりたいって思うはずよ! 私がモンスターを沢山倒すところ見たらね!」


「……それ絶対か?」


「ぜっっっっったいよ!」


「はぁ……今日だけだぞ。言っておくけど俺はマジで何も出来ないからな」


「ほんと!? やったわ!! ほら、クエスト見に行くわよ!!」


 まぁ、断る身として1回くらいワガママに付き合ってあげてもいいか。初めてこれから定期的に仲良くできそうで良い人なんだからな。


 ソラ。こうして、異世界生活初めてのクエストが始まるのであった。

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