第4話 桂沢林道

 近くに博物館がある

 化石の博物館

 陳列されているアンモナイト

 いろいろな種類

 直径二メートルもあるもの

 気持ち悪い

 こんなのが生きていたなんて


 ここは昔

 海だったということ

 もの山の中が海だったということ

 遥かむかしの痕跡がいたるところに刻まれている


 ここの地盤は面白い

 よく車両が埋まって動けなくなる

 もがけばもがくほど地中に埋まっていく

 硬い岩盤があって

 その上にただ土が乗っかっていて

 もがけばもがくほど土が横に逃げて

 どんどん地中に埋まっていく

 砕石を敷き補強している林道

 数日で砕石は土に飲み込まれ姿を消す


 そんなもと海だったところに

 草や花が咲き

 森林となった

 ここを訪れるのは虫や小鳥や動物

 訪れる人間は林道管人や

 山菜取りや

 四駆に乗った狩猟者

 ここが海だったことなんて考えていない

 ロマンを抱く化石採集者だけ考えている



 林道に分かれ道がある

 遭遇すると不安だ

 明るい日の当たる方を選ぶ

 でも、暗い方も気にかかる

 興味本位

 何かいる

 何かある

 期待と不安


 鉄骨で門が出来ている道がある

 古びて錆びついている

 門の両端は草むらで

 車が入れないようになっている


 ”入るな”ってことだろうが

 入りたくなる

 奥に行きたくなる

 

 B級のホラー映画のようだ

 対外はヤラれる

  

 普段は

 こんな心理状況を味わうことはない

 人は恐怖を楽しむもの

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