Re:Bonds ーキズナー

第1話 闇の中で

幸也は細身で背が高く、いつも物静かで控えめな少年だった。彼の黒髪は少し長めで、薄いフレームの眼鏡をかけていた。幸也の瞳はいつもどこか不安げで、彼の内面の孤独と恐れを映し出していた。

幸也の母親は、彼にとって唯一の安らぎだった。彼女は優しく、いつも幸也を気遣ってくれた。母親の笑顔は太陽のように温かく、彼女の声はいつも柔らかく心地よかった。毎晩、彼女がベッドサイドで絵本を読み聞かせてくれるとき、幸也はその優しい声に包まれて、幸せを感じた。

「幸也、今日はどんなお話が聞きたい？」母親はいつも彼に微笑みかけながら尋ねた。

「お母さん、今日はお星さまのお話が聞きたいな。」幸也は目を輝かせて答えた。

そんな幸せな日々は、母親が再婚することで一変した。新しい義理の父親、田中は最初は優しそうな印象を与えた。田中は背が高く、がっしりとした体格で、柔和な表情を浮かべていた。彼の笑顔は温かく、初めて会ったとき、幸也は少し安心感を覚えた。

「これからは俺たち三人で幸せに暮らそう。」田中はそう言いながら、幸也の頭を優しく撫でた。

しかし、その優しさは長くは続かなかった。田中は次第に本性を露わにし、彼の怒りが爆発することが多くなった。特にアルコールを飲んだ夜には、田中の態度が豹変した。彼の目は鋭く光り、顔は恐ろしいまでに歪んだ。

ある晩、田中が酔っ払って帰宅し、幸也に怒鳴りつけた。「お前のせいで俺の人生が狂ったんだ！」その言葉は、幼い幸也にとって耐えがたい恐怖だった。田中の顔は怒りに満ち、目は血走り、幸也を睨みつけるその姿はまさに悪夢のようだった。

「やめて！幸也には何の罪もない！」母親の叫び声が家中に響き渡るが、田中の怒りは止まらなかった。母親は必死に幸也を庇おうとしたが、田中の暴力は止まらなかった。

母親もまた、田中の怒りに怯え、幸也を守ることができなかった。彼女はその無力さに涙を流しながら、幸也に「ごめんね、ごめんね」と繰り返すしかなかった。

やがて、母親は病気に倒れ、その後間もなく亡くなった。母親の死は、幸也にとって絶望そのものだった。彼の心の支えが消え去り、田中の暴力は一層酷くなった。最終的に、田中は幸也を施設に預けることにした。「もう面倒見きれない。お前は施設で生きろ。」

施設の門が閉じる音が、幸也の心に孤独と絶望を刻んだ。新しい環境に適応することは難しく、彼はますます心を閉ざしていった。幸也は、自分が何もかも失ってしまったことを痛感し、暗闇の中で希望の光を見失っていた。

これから何が待っているのか、幸也には全くわからなかった。ただ一つ確かなのは、彼の心の中に深い傷と恐れが残り続けていることだった。この先、彼はどのようにしてこの暗闇から抜け出すのか、幸也自身にも答えは見つかっていなかった。

そして、彼はその不安を抱えたまま、次のページに進むしかなかった。