第15話 予想外の告白

友人との友情と、菜々子への想い。

その葛藤の中、幸也は菜々子への告白を決意した。


その日の昼休み、幸也は菜々子をカフェに誘った。彼は緊張していたが、決意は固かった。しかし、菜々子は先に相談があると言ってきた。


「高橋君、実は相談したいことがあるんだけど……いいかな?」菜々子は少し恥ずかしそうに切り出した。


「もちろん、何でも聞くよ。」幸也は心の中で緊張しながらも、穏やかに答えた。


「実は……私、好きな人がいるんだ。でも、その気持ちをどう伝えたらいいか分からなくて……」菜々子は顔を赤らめながら話し始めた。


「そ、そうなんだ……」幸也は驚きとショックを隠せなかったが、なんとか冷静を装った。「その人って、どんな人?」


菜々子は一瞬ためらったが、深呼吸をして答えた。「その人は……あの人なんだ。」そう言って菜々子が指を差したのは、カフェで働いている店員だった。


菜々子の指差した人物は幸也の知っている顔だった。

幸也の心臓は一瞬止まったかのようだった。前澤健太――彼の過去のトラウマが蘇る名前。しかし、もうそのわだかまりは解けたので、幸也は冷静さを保ち続けた。


「へえ…あの人なんだね……」幸也は平静を装って答えた。


「うん。彼とは会社の帰り道に数人の男の人にナンパされそうになった時、偶然通りかかって助けてくれたの。それ以来、このカフェで働いている事を知って話していくうちに彼の優しさと勇気にだんだん惹かれてしまって……」菜々子は恥ずかしそうに微笑んだ。


幸也はその言葉に胸が締め付けられるような思いをしたが、友人として菜々子を支えることを決意した。「そっか……」


「そうなの。でも、どうやって伝えたらいいか分からなくて。高橋君、どうしたらいいと思う?」菜々子は真剣な目で尋ねてきた。


幸也は自分の心に正直になることを決意し、深呼吸をして答えた。「菜々子さん、正直に気持ちを伝えることが大切だと思うよ。菜々子さんの好きな人なら、きっと君の気持ちを受け止めてくれると思う。」


「ありがとう、高橋君。君のアドバイスを聞いて、勇気が出たよ。」菜々子は幸也の言葉に少し安心したように微笑んだ。


そのとき、健太が幸也と菜々子のテーブルに飲み物を持ってきた。「こちら、ご注文の飲み物です。」健太は笑顔で飲み物を置いた。


「ありがとう、健太さん。」菜々子は健太に微笑みかけた。


健太は幸也の顔を見ると、一瞬驚いたような表情を浮かべた。「あれ、幸也?」


「健太……久しぶりだな。」幸也は健太に笑顔を返したが、内心は複雑な感情でいっぱいだった。


「え、高橋君と健太さんって知り合いなの?」菜々子は驚いた表情で尋ねた。


「そうだよ。昔いろいろあって…。」健太はにこやかに答えた。


「そうなんだ……なんか、偶然ってすごいね。」菜々子は驚きと興奮を隠せない様子だった。


その日の夜、幸也は一人で部屋にこもり、心の整理をしていた。菜々子の恋愛相談が、まさか自分にとっての失恋になるとは思ってもみなかった。しかし、幸也は友人として菜々子を支えることを決意し、前を向くことにした。


そして、彼は美香にも感謝の気持ちを伝えるために、メッセージを送った。「美香、君のアドバイスに感謝してる。ありがとう。」


美香はそのメッセージを受け取り、心の中で幸也への想いをさらに強くしたが、それを隠し続けることを決めた。「幸也君、これからも一緒に頑張ろうね。」と返信し、彼を支える決意を新たにした。

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