第8話 チームの絆

プロジェクトが本格的に動き始めて数週間が経過し、幸也はますますその重圧に苦しむようになっていた。しかし、幸也の周囲には彼を支える同僚たちがいた。特に菜々子と中村大蔵の存在は、幸也にとって大きな救いだった。


幸也がある朝、オフィスに到着すると、中村が声をかけてきた。「おい、高橋。今日も元気にやってるか?」


「うん、なんとか…」幸也は笑顔を見せようとしたが、目の下にうっすらと浮かぶクマがその疲れを物語っていた。


「お前、無理すんなよ。俺たちチームなんだから、困ったらすぐ言えよ。」中村はガサツな雰囲気を漂わせつつも、その言葉には真心が込められていた。


「ありがとう、中村君。」幸也は感謝の気持ちを込めて答えた。


その日、幸也は新しいタスクに取り組んでいたが、どうにも手が進まなかった。数時間が過ぎ、焦りと不安が募ってきた。その時、菜々子が幸也のデスクにやってきた。


「高橋君、ちょっと休憩しない?」菜々子はいつもの明るい笑顔で誘った。


「小向さん、ありがとう。でも、まだ仕事が…」幸也は断ろうとしたが、菜々子は首を振った。


「少しリフレッシュすることも大事だよ。さ、行こう。」彼女は幸也の腕を引っ張って休憩室へ連れて行った。


休憩室でコーヒーを飲みながら、菜々子は話を始めた。「高橋君、最近すごく頑張ってるよね。でも、自分にプレッシャーをかけすぎないで。みんなで協力すれば、もっと楽に進むから。」


「うん…ありがとう、小向さん。君のおかげで、少し気持ちが楽になったよ。」幸也は本音を漏らした。


「私も最初は不安だったけど、今はこうやってみんなと一緒に働けてる。それに、高橋君はもっと自信を持っていいと思うよ。」菜々子は励ましの言葉を続けた。


その後、幸也は再びデスクに戻り、仕事に取り組んだ。菜々子の言葉が心の支えとなり、少しずつ自信を取り戻していった。しかし、次第にプレッシャーが再び襲いかかってきた。


ある日、幸也が仕事に集中していると、中村が声をかけた。「高橋、何か手伝ってほしいか?」


「中村君、ありがとう。でも、自分で何とかしないと…」幸也は頑張ろうとしたが、中村は笑顔で言った。


「一人で抱え込むんじゃねぇよ。チームなんだから、みんなで協力しようぜ。」中村の言葉に救われ、幸也は素直に助けを借りることにした。


プロジェクトが進む中、幸也は少しずつ成長していった。山田課長の厳しい指導にも耐え、菜々子や中村のサポートを受けながら、幸也は自分の力を発揮し始めた。


「高橋君、この調子で頑張ってくれ。」山田課長は冷静ながらも、少しだけ柔らかな表情で言った。


「はい、ありがとうございます。」幸也は力強く答えた。


プロジェクトの終わりはまだ見えないが、幸也は確かな手応えを感じ始めていた。菜々子や同僚たちの支えがある限り、どんな困難にも立ち向かっていけると信じていた。

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