あとがき
あとがき
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。連載当初から追っていただいた方々、連載終了後からお読みいただいた方。すべての方々に、心より御礼申し上げます。
この物語の舞台は、ほぼ私の母校そのものをモチーフにしています。福岡県の一地方にある中高一貫校、そこが私が若かりし頃に学んだ場所です。ですがこの話自体は完全な私のフィクション、何となれば私が在籍していたころはまだ男女共学ではなかったのですから。だから校内恋愛……噂では多少聞いたこともありましたが、その時分は同性間での友達以上の関係というものについて語られることはほとんどありませんでした。
この作品は、そんな私の中学・高校時代へのはなむけの言葉として書いたものです。主人公の環季の性格には、多分に自分のそれが投影されています(私の成績は彼女と違って散々なものでしたが)。中高と目立たないことだけを考えて生きてきた私は、結局大学時代も内向的な性格を変えることができませんでした。社会人になってこれでは仕事に適応できないと悩んだ末、無理やりに他人の輪に入っていくことで、ようやく人と話せるスキルだけは身に着けることができました。しかし、必要に迫られて人と触れ合うことを自分に課した私は、いまでも寂しさを感じることがあります。もっと自然に純粋な心で――誰かを求め、求められ、傷つき傷つけられながら、そうやって自分を変えることができていたら。
だから本作での生徒会の三人は、あの時そうなりたかった私です。彼らの誰一人として、何かが解決したわけではありません。それでも、自分に素直に、目をそらさずに、こわごわとでも新しい世界に踏み出していける小さな勇気。自分が本当に欲しかったものを、この作品で書いたつもりです。あの時の自分にもし会えたなら、この小説を差し出して、大丈夫だよと言ってやりたい。真っ暗で何も見えなかった自分に、前に歩き続けるだけでいいんだよと肩を抱いてあげたい。それでも書き終えた今は、卒業式で泣けなかったあの日の自分に、ようやくさよならを言えたような気がしています。心配しないで、何とかやっていけてるからさ、と。
夕方にランニングしながら帰宅していると、わが校の後輩を満載したバスと偶然出会いました。卒業式も終わり大学入試の合否結果が発表されたばかりの今、乗車している生徒の中には受験生となる新高三の生徒も混じっているに違いありません。
頑張れ。
すれ違いざまに車道と反対側の手でこっそりピースを送った私は、やはり小心者のままでした。
このような自己満足に近い作品に最後までお付き合いいただき、感謝の言葉もありません。ほんのひとかけらでもあなたの中に何かを残せたのなら、作者として望外の喜びです。
本当にありがとうございました。
2024年3月19日
諏訪野 滋
ラジオの向こう 諏訪野 滋 @suwano_s
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