紙飛行機
私は、そんなことを考えながら、ある場所に向かっていた。そこの扉を開けると、冷たい風が流れ込んできた。
「はぁ、気持ちい。」
私がそう言って背伸びをすると、頬から何かが伝ってきた。私は、それを無理して、止めようとはしなかった。止めどなく溢れてくるこの想いも、涙も。
私は、それが落ち着くまで、泣いた。一人、屋上で。どれくらいたっただろうか。最初に来たときは、まだ明るかった空がいつの間にか、夕焼け色に染まり始めていた。私は、ふと、鞄からノートを取り出した。そして、ページを一枚破り、そのページで紙飛行機を折る。私は、それを勢いよく、飛ばした。
「……好きだったよ。」
私は、誰に言うわけでもなく、ぽつりと呟く。
そのまま紙飛行機は、その想いをのせて、ひらひらと風に吹かれていった。
「これで、君のこと忘れて前に進めるかな。」
私は、一人呟く。この学校には、二つの言い伝えがある。そのうちの一つ。屋上から想いを乗せた紙飛機を飛ばせば、その紙飛行機が想いを乗せていく。失恋したときにそれを行えば、忘れて次に進むことが出来る。そんな言い伝え。
「何してんの?」
その時、後ろから低く、それでいて透き通った声がした。
「別に、何も。」
私は、そう言って、声をかけてきた男子の横を通り過ぎた。そのときの、私は知らなかったんだ。屋上から、紙飛行機を飛ばした人はその日中に必ず、運命の人に出逢うという、もう一つの言い伝えを⋯⋯
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