言い伝え

「でもさ、俺、欲張りみたい。その子が他のやつに笑いかけてるの見るだけで苛つくし、話してるのを見たくないし、その癖、素直に話せないし。」

どうしよう、私、今きっと真っ赤だ。

「なぁ、野原。俺、あの日からどうしようもないくらいお前のことが好きだよ。」

私は、零れそうになる涙を必死で堪える。

「……っ、うん。」

「雨、上がったな。」

君が傘を閉じる。私は、その間も、涙をこぼさないように俯く。いつの間にか、お互い立ち止まっていた。

「お前さ、この傘の言い伝え、知らないとか言わないよな?」

君は、私の正面にきて、さっきまで使っていた傘を指す。私は、もう、涙が抑えきれなくて、頷くことしか出来なかった。知らないわけがない。この学校では、有名な言い伝え。

この学校に置かれている白い蝶があしらわた傘を使った二人は……結ばれる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る