覚悟

あの時、君が傘を使うと言った時、まさかと思っていた。本当に、こんなことが起きるなんて。

「なぁ、期待してもいい?」

「……う、ん。」

私は、泣きながら頷く。

「泣くなよ。俺が泣かせたみたいじゃん。」

「……だって、だって、両思いになれるなんて、思わな、かった、から。無理だと思ってて、だから。」

「俺もだよ。俺だけがお前のこと好きだと思ってた。だから、今すげーお前を抱きしめたい。なぁ、抱きしめていい?」

君は、そう言って、私に近づいた。

「……っ。ばか。」

私がそう言ったと同時に君が強く私を抱きしめる。

「好きだよ。矢島くん。」

私は、そう言って、君をみつめる。いつのまにか、涙は止んでいた。

「お前、覚悟しとけよ。」

君は、顔を真っ赤にしながら、怒ったように言う。

「覚悟?」

私はよくわからずに君の言葉を繰り返す。

「俺さ、独占欲強いわけ。だから、お前のこと、もう絶対に離す気ないから。一生俺に愛される覚悟しとけよ。」

君は、不敵に笑った。その瞬間、私は悟った。


私はもう、君からは逃げられない。

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