愛してる
香崎 莉愛
覚悟する
雨
「雨、凄いね。」
「そうだね。」
そう言って、私達は、空を見上げる。
「なぁ、野原。」
「なに?」
「お前さ、好きな奴とかいるの。」
「⋯…いるよ。」
今、隣に。その言葉を飲み込んでドキッ。ドキッと速くなる鼓動を抑えつつ、いつものように自然に答える。
「そっか……」
君の声に、元気がないように感じるのは、この雨のせいなんだろうか。
「矢島くんはいるの?」
私は今まで気になっていたけど、聞けなかったことを聞いた。
「いるよ。」
「そっか、矢島くんの好きな人ってどんな人?」
「驚かないんだな。」
「……まぁね。」
本当は、驚いてる。
それに、好きな人がいるなんて、知りたくなかった。でも、私、馬鹿だから。諦めが悪いから。もしかしたら、その人に勝てるかもしれない。そんな打算的な考えを隠してまた聞くの。
「それで、どんな人なの?」
「明るくて、いつも馬鹿みたいに、誰かに気を遣ってて、こんな俺にも、怖がらずに話しかけてくれる、そんな人だよ。」
君は、愛しくて、愛しくてたまらない、そんな顔をしていた。
「……そっか。いい子だね。」
勝てないと思った。君にそんな顔させる人が、愛されてる人が羨ましい。私も、その人になりたかった。辛い。自分で聞いた癖に、この場所から逃げだしたいと思ってる。こんなことなら、聞かなきゃ良かった。いや、そもそも傘を忘れなけば良かった。君を好きにならなければ……
「それにさ、どんなにアピールしても、気づかないし。」
君は、そんな私の様子にきづいていないのか、話を続けようとする。
「もう、いいよ。」
私は、気持ちを悟られないようにしながら、平然と答える。
「そいつの前だと、無駄に緊張して話せないし⋯」
「もう、いいってば!」
私は、聞きたくなくてとっさに、声を荒げた。でも、そんな、私に驚くことなく、君は続ける。
「今も、二人っきりでチャンスなのにどう声をかけていいのかわからないし、相手を怒らせちゃうし。」
「……えっ?」
君が何を言っているのか、理解できなかった。だって、そんなことあるはずない。
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