全てに感謝してる

「そうだね。良かったよ。」

私もつられて笑う。

「ねぇ、朔。」

私は隣にいる朔を呼ぶ。

「なに?凜。」

朔は、あの頃から変わらない笑みで私に聞く。

「あのとき、私に声かけてくれてありがとう。」

「今更だね。」

君はそう言って苦笑いする。

「今更だよ。でもね、伝えなきゃって、あの二人見ててなんか思った。」

「そっか。」

「あのとき、私は、瞬のことしか見えてなくて辛かった。なんで、私じゃなかったんだろうって。」

私は、伝えたいことを少しずつ言葉にしていく。

「瞬のこと、好きにならなきゃ良かったとも思った。でもね、今は、そう思わないよ。あのとき、瞬のことを好きになって、想いがなくなるように願って、あの屋上に行ったその全てが、嫌なことも含めた全部が、今ここに繋がってる。あの日、もし屋上に行かなかったら。そもそも瞬のこと好きになっていなければ、私は朔と出逢えてなかった。私は、朔と出逢わせてくれた全部に感謝してる。」

「僕も、あの日もしも凛を見かけなかったら、追いかけなかったら、凜とはこうして出逢えなかった。今、こんな風に手を繋ぐことすら出来なかった。」

朔は、私と繋いでいる手をさっきよりも、強く握った。私もそれを握り返す。

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