諦めたくなかった

知りたくなかった。認めたくなかった。嘘だと思いたかった。

瞬に好きな人がいるなんて思いたくなかった。でも、本当は、気づいてた。知ってた。瞬に好きな人がいること。

それが、さっきいた子だってこと。だって、瞬の教室に行くと、瞬は必ず誰かを見ていて、その目線の先にはいつもあの子がいて、それに、最近一緒にいてもずっと上の空だったし、今まで、好きじゃなかった曲とかよく聞くようになってたし。柄にもないストラップとか大切にしてたし。それに、最近活き活きしていたし。その全部が、瞬が恋してるって物語っていた。

だって、私もそうだったから。瞬が好きだって気づいた時から、世界が輝いたから。だから、あの日、瞬にああ言われたとき、何となく気づいていた。こうなるだろうって。それでも、諦めたくなかった。だから、必死で今日まで足掻いた。瞬の好きなお菓子を頑張って作ってみたり、一緒にどこかに行きたいってデートに誘ってみたり、慣れないオシャレをしてみたり、色んなことをしたよ。

でも私が、どんなに君の気をひこうとしても、瞬の目が、私を捉えることはなかった。それでも、少しの可能性を夢見てた。もしかしたら、私のこと好きなってくれる日がくるかもしれないとか。告白したら何か変わるかもしれないとか、思ってた。ほんの少しの可能性を今日まで信じて、頑張ってきた。それなのに、君は、私に気持ちすら伝えさせてくれないの。あんな幸せそうな顔みたら、言えなくなってしまうに決まってる。私、ちゃん話があるっていったはずなのに。君は、今日すらも私じゃなくて、あの子を見るんだね。今日くらい、私のこと見てほしかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る