他人を直視できるのは、自分を直視できる人

本論考は、なろう系が流行る理由について細かな手つきで明かします。その筋の良さは他のレビューアーの皆様が言及するとおりです。

ここでは、わがままに、本論からずれたところを述べさせていただきます。

本論考で、なろう系に対する洞察と共に、筆者自身の内面が繰り返し語られます。それは冷徹で、しかし論理だけでなく苦渋に満ちていて、自虐に墜ちるスレスレの道を進みます。読むと筆者の心理を追体験できます。筆者は自身の内面を語ることに成功しています。

ネット小説に触れ、なろう系にアンビバレントな感情を抱きつつ、ネット小説全体からは退場しない、筆者の苦しさが伝わります。

筆者は自身の内面の苦しさを出発点にして、なろう系という『怪物』の解剖に挑みます。

他人を直視できるのは、自分を直視できる人です。その態度は、なろう系の読者が持たないものです。

何を言いたいか、私の筆では上手く伝えられません。論考の本文をお読み願えませんか。筆者の言葉でなら伝わると思います。

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