第4話


 赤坂の動きと台詞は受け入れ難かったが、言っている事には納得出来た。


 そして同時に、赤坂の語彙力の底を垣間見た気もした。


 要するに”某”絶対順守の能力的な何かと類似したものだろう。

 もしくは相手を魅了する能力か……。

 対象に強制力を持って思考を操作するという意味では同じようなものか。

 俺の案との相違点は”強制力”が働くかどうかという部分。

 そこが”ファンタジー”か……。


 「要するに”可愛い”という印象を、相手に植え付けて操るとかそういう話か?」


 それしか無いと思いながらも、確認をしてみた。


 「いや、少し違うな」


 違うのかよ!!

 じゃ、何だよ!!

 それ以外に出てこないだろ!!


 「じゃあ、いったい何なんだ?」

 「”キュンとなる”とはいったいどんな状態だと考える?」

 「はっ?いや、まぁ、そりゃ、胸が締め付けらるような……甘く、苦しい感じか?」


 「そうだ……。そして、そのまま心臓を破裂させる」



 まさかの物理干渉系かっ!!?

 ”可愛い”はどこ行った?

 確かにゆるふわ令嬢がそんな能力使うってのは気になるけど……。


 「いやいや、まてまて、それじゃ全然”可愛い”が絡んでこないだろう?”可愛い”どころか怖いわ」


 「それも少し違うな……。”可愛い”等の感情を抱き、胸が”キュン”となる時というのは『ドーパミン』『ノルアドレナリン』『アドレナリン』というホルモンが分泌される。『ドーパミン』は快感を……そして『ノルアドレナリン』や『アドレナリン』は心拍数や血圧を上昇させる効果がある。つまり心臓に大きな負荷が掛かるのだ。更に、ノルアドレナリンは不安や緊張感も生じさせられる。キュンとするとはそういう危険性も孕むモノだという事だ」


 「……へっ、へぇ~」


 分からないので頷く事しか出来なかった。

 よく聞くワードも出てきた気はするが、詳しくは知らないし。

 ってか、急にそんな難しい話を出されてもついていける訳がない。

 高血圧で殺すって事?



 「じゃ、赤坂はそういう精神干渉系スキルで戦う令嬢モノを書きたいってことぉ~?」


 沼田は寝転びながら赤坂に尋ねた。

 えっ!?この話理解してんの?


 だが「結局はバトルか……」と、心の中では少し安堵していた。



 「いや……。二人の意見を聞きながら少し考えを改めたところだ」


 何を?

 いや、俺等……というか俺の意見を聞く気があったのか?



 「どぉ変わったの~?」


 相変わらず今にも寝てしまいそうな感じで沼田は尋ねた。


 「令嬢はそのスキルを持って悪人を裁いていくのだ!」



 まさかの勧善懲悪モノかよっ!?

 スキルは『某』印籠かっ!?


 ついでに、最終手段は脅迫!?

 あっ、それを言うと、遠回しにオリジナルもそうだったか……。

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