第9話


 「……取り敢えず、確認しておきたい」


 俺は『もう、どうでもいいか?』と、思いながらも、一応は作る側の端くれとして赤坂に尋ねる事にした。


 「何だ?」

 「どうして”余談”が本文中に入っているんだ?しかも、作品に噛み合っているとも思えないんだが?」

 「何を言う?舞台をより、リアルに感じて貰う為に史実を交えて説明をしているだろう?」


 混ざってないから。

 俺が読んだ辺りでは”史実”が完全に一人歩きしてるよっ!!

 〇ィキペディアを読んでいるようにしか思えなかったからね!?


 「ってか、この国実在しないよね?」

 「当然だろう?異世界ファンタジーなのだからな」


 いや、じゃあ、どうしてフランスの百年戦争とか出てくんだよ!

 ”異世界”と”現実世界”が混ざって喧嘩しちゃってるよ!?


 あれ……?そうなると、ある意味では混ざってるのか?

 感情を”交える”、と、一戦を”交える”の違いか?


 ――なんていう大層な話では無いな。

 思考を元に戻そう。


 この問題点をどう説明したら伝わるのだろうか?

 明らかにおかしい事は理解出来ているのに、それを分かり易く説明する術が見つからない。

 「作中に関係の無い余談を入れるな」と、言えばそうではあるが、全く関係が無いとも言い切れないのか。

 あくまで世界観を説明しようとした手段の一つというのだから……。

 ならば、アプローチが間違っていたという事か?

 仮に『余談だが――』の部分だけを無くせば体を成せるのか?


 ――そういう話でも無い気がする。

 やはり、異世界の世界観を理解させる為に、現実世界の歴史を持ち出したという事が合致しなかったという事か?


 そこで”ある事”に気が付いた。


 俺は序盤で読む事を断念してしまったが、これがもし、『転移者』もしくは『転生者』視点の物語だった場合は成り立つのではないか?と……。

 勝手にウメコが主人公であると思い込んでしまったいたが為に、冒頭の文で『三人称』を意識したが、もしかしたらその光景を目の当たりにしていた、転移・転生者が主人公の『一人称』視点の物語であった可能性も出てくるのか。


 そうなってくると、多少の違和感はあるが、理解出来ない事も無い。

 全体を読まず、序盤だけで判断しようとした自分の早計さを悔いた。

 しかし、赤坂にそんなテクニカルな事が出来るのか?

 高学歴のなせる業なのか?



 「……すまん。もう一度読み直してみる」


 考えを改め、もう一度A4用紙に目を通し始めた。



  ◇  ◇  ◇



 結果としては、当初の想定通り、見事に期待は裏切られた……。

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