第10話
「何か変わったか?」
赤坂が俺に尋ねる。
ああ、変わったさ、いや、むしろ変わらなかったのか……。
俺が考え過ぎた事で、一瞬、赤坂に感心しそうになってしまった。
「いや、変わらなかったな。驚くほどに」
若干の皮肉を込めて言った。
「では、やはり不服があるという事か……。それはいったいなんだ?」
だから何で上から目線?
「不服というか……。人称代名詞って言葉は知っているか?」
「あぁ、概念としてはな」
本当に知ってんのかよっ!!
ならば何故、こんな支離滅裂とした文章になる?
「じゃ、なんで三人称から始まって、一人称の語りが始まったと思ったら、途中から神視点の様な解説が始まるんだ?」
「ん?それか?それは、お前に話すつもりで書いていたからだが?」
まさかの二人称を考えていたのか!?
いや、それにしてもおかしい。
少なくとも作中では『俺』が登場していない。
「ならば何故、作中で俺に語り掛けないんだ?」
「読んでいるなら語っているのと同じだろう?」
何だろう?何かがおかしい。
いや、色々とおかしい事だらけ過ぎて、何から説明すべきか説明し難い。
俺が苦悩していると、傍らでいつの間にやら起き上がっていた沼田が小説に目を通し始めていた。
「これってウメコに憑依転生した主人公の話なの?」
憑依転生……だと?
まてまてまて……ウメコの中に転生し、憑依した”誰か”視点の物語だというのか?
そんなトリッキーな事は俺も考えていなかったぞ!?
では、ウメコの中の”別人格視点”で紡がれるストーリーだったという事か?
「いや、ウメコはウメコだが?」
怪訝な表情を浮かべる赤坂。
「ああ、梅子が憑依した話なんだぁ」
納得する沼田。
多分、二人が言っている事は全く通じ合っていない。
同時に俺も何が何だか分からなくなり、困惑していた。
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