朝の恐怖

ずしりと、身体の重みが増した。

 ずん、ずんと乗り上げる重みが、私の恐怖を煽っていた。


 ああ、は。目を開けてはいけない。目を閉じていてもありありと分かる視線が私を絡め取って離さないのだ。

 

 

 私はぎゅっと目を閉じて、が過ぎ去って行くのを待った。

 は眠っていると、遠のくのだ。


 けれども、カリカリと爪を立てる音が鳴った。

 

 カリカリカリカリ――――


 は私の布団を剥ごうと、躍起になる。これは起きていると知られている合図も同然。

 目を、目を開けてはいけない。だが――


 べろり。

 捲られた布団から現れた手を目掛けて、何度も何度も何度も、舐め始めた。


 ああ、もう駄目だ。





 くすっぐたいから止めて。

 あ、顔は舐めないで下さい!






「わかりました、起きます。起きるので勘弁してください」


 目を開ければ、専らイケオスと称されるベージュ色とホワイトで覆われたロングコートのチワワが私をこれでもかと見下ろしていた。

 彼の狙いはいつも私なのである。

 因みに、チワワが起こした事を知ると、我が家のおとぼけ犬こと、弟ポジションであるブラウンとホワイトのパピヨンが、『早よ、ご飯の用意せんかい』と、布団の横から「うう、うう」と唸り始めるのだ。


 仕方がない。時刻は6時半……まあ、起きれる。

 土曜日だけど。起きますよ。


 私は今日も、可愛いわんこ達のしもべである。






 ちなみに彼らの必殺技は、『娘ちゃん起こすぞ、ええんか』である。うん、土日の朝はゆっくりしたいから止めてください。



 おわり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

朝の恐怖 @Hi-ragi_000

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画