世界。敵。滅び。闘争。すべては具現化した少女たちの心象風景。
- ★★★ Excellent!!!
(読了後、幾分期間が空きましたが感想を)
「まっとうな猶予を与えられなかった刹那的なモラトリアム」。一文で表すに、この作品を私はそう思いました。
年端もいかぬ、中身がないがゆえに虚像を追いかけて充足を求める、少女という期間。平和な世界であれば家庭や教育などの支えで大人になるものですが、そのような中間項はこの作品に存在しません。徹底的に削ぎ落とされています。作中舞台となる軍事組織も、そのじつ社会性など有していないように見えます(レナトスなどは使い捨てのコマという認識なので)。人間関係もレナトスと呼ばれるごく限られた少女たちの間で閉じています。
苛立ち。羨望。自虐。破滅。
作中でフォーカスされるのは、すべては少女たちの年頃特有の主観。
それ以外の要素をあえて書き割りにおいやっている手法なのです。(正統的なセカイ系)
滅びかけた世界とは、経験も知識も情緒もからっぽで不安定な少女たちの目に映っている世界にすぎないからです。そもそも疎外された境遇の彼女らにとって、信じるに値する現実など存在しないのです。だから頼みにするのは、未成熟な己の主観だけ……。
社会も職業も他者も存在しないかのような、あえて空疎な世界観も。排他的な願望を投影した戦闘様式も。中庸を知らずドロドロと寄りかかった人間関係も。すべてはモラトリアムを迎えた少女的価値観の現れなのでしょう。ゼロか破滅か。ウェットな攻撃性がこの上なく表現されていました。
モラトリアム特有の衝動——とりわけ少女性が練り込まれた、オリジナリティある作品でした!