(読了後、幾分期間が空きましたが感想を)
「まっとうな猶予を与えられなかった刹那的なモラトリアム」。一文で表すに、この作品を私はそう思いました。
年端もいかぬ、中身がないがゆえに虚像を追いかけて充足を求める、少女という期間。平和な世界であれば家庭や教育などの支えで大人になるものですが、そのような中間項はこの作品に存在しません。徹底的に削ぎ落とされています。作中舞台となる軍事組織も、そのじつ社会性など有していないように見えます(レナトスなどは使い捨てのコマという認識なので)。人間関係もレナトスと呼ばれるごく限られた少女たちの間で閉じています。
苛立ち。羨望。自虐。破滅。
作中でフォーカスされるのは、すべては少女たちの年頃特有の主観。
それ以外の要素をあえて書き割りにおいやっている手法なのです。(正統的なセカイ系)
滅びかけた世界とは、経験も知識も情緒もからっぽで不安定な少女たちの目に映っている世界にすぎないからです。そもそも疎外された境遇の彼女らにとって、信じるに値する現実など存在しないのです。だから頼みにするのは、未成熟な己の主観だけ……。
社会も職業も他者も存在しないかのような、あえて空疎な世界観も。排他的な願望を投影した戦闘様式も。中庸を知らずドロドロと寄りかかった人間関係も。すべてはモラトリアムを迎えた少女的価値観の現れなのでしょう。ゼロか破滅か。ウェットな攻撃性がこの上なく表現されていました。
モラトリアム特有の衝動——とりわけ少女性が練り込まれた、オリジナリティある作品でした!
導入部分が正直非常に読み辛く、専門用語なども多い。
文章も粗削りで、戦闘シーンなどは勢いがあって目を見張るものがあるが、それ以外では読み辛い所があったり話の流れがふと分からなくなる事もある。
…しかし、それでも面白い。
大枠はシリアス系の美少女ソシャゲのような世界観。
退廃した世界観で女の子達が兵士となって戦っている系の話。
それをライトノベルに落とし込み、小説だから出来る綺麗な文章で装飾し、小説だから出来るエグい設定やストーリーで盛り上げている。
そして、そんな物語の中で語られるテーマ性は
「辛い現実には死ぬか立ち向かうしかない」というもの。
現代のラノベが無くしてしまった、本来は現代のラノベがやるべきであったようなものが、この小説には込められていると思う。
ポストアポカリプスとか、可愛そうな境遇の中で戦う女の子とか、退廃的で神秘的な雰囲気とか
そういうのが好きな人は読んでみる事を是非お勧めします。