現代人の生の悲鳴を、ホラーという装いで見事に昇華させた作品である。
主人公が抱える日々の苛立ちと、それを秘密の手帳に記すことで得る一時の安堵は、読者の心の琴線に触れる。
この手帳が持つ不思議な力は、単なるストレスのはけ口を超え、読者に対して、自身の心の闇に潜むものと向き合わせる。
一筆一筆に込められた意味は深く、その結果としての超自然的な出来事は、心理的な恐怖を煽り、私たちが抱える日常の不安を形象化する。
この物語は、ただ怖がらせるためだけではなく、私たちが日々対峙している内面の葛藤を巧みに描き出しており、小説としての価値は計り知れない。
人生というものは平地を歩いている様でいて、実に不安定です。まるで海の上に浮かぶ小舟みたいなもので、ゆらゆらと揺れています。
波という他者の干渉を受けながら、自己と言う小舟の世界を守ります。小舟はその揺らぎに対し、バランスを取ろうとする為に揺れるのです。
僕らを波が揺らすのでなく、小舟自身が揺り返しという行為をもって元に戻ろうとします。
時としてその揺らぎは耐えきれない大きさを生み出し、小舟はいつまでも揺れ続けないとバランスが取れなくなります。
つまり、バランスを取る為にバランスを崩し続けるのです。
終わりなき不安定、それが生きると言う行為、その対価のひとつです。
僕はこの物語を拝読して、そんな事を考えていました( ;∀;)